皮膚科の臨床研究・基礎研究を幅広く展開 皮膚粘膜病態学分野 佐伯 秀久 大学院教授

新薬開発にも積極的に関与

「皮膚は内臓の鏡」と言われることがあります。皮膚は人間の体で最も大きな臓器であり、しばしば全身性疾患や他臓器の疾患とも関連することが特徴です。したがって皮膚科学を学ぶことは一般臨床医にとっても有効であるといえるでしょう。
皮膚粘膜病態学分野では皮膚科に関する臨床研究と基礎研究を幅広く展開しています(乾癬、アトピー性皮膚炎、光線、レーザー、皮膚悪性腫瘍、皮膚外科、皮膚病理など)。特徴的なものとしては私の専門分野とも重なる、乾癬やアトピー性皮膚炎に関する臨床研究があり、既に多くの研究成果を挙げています。私自身これまで「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」「アトピー性皮膚炎におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬の使用ガイダンス」「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)」「乾癬におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬(JAK1阻害薬とTYK2阻害薬)の使用ガイダンス」の筆頭著者としてこの分野の臨床に深く関与してきたほか、アトピー性皮膚炎に対する新規薬剤の開発にも医学専門家として積極的に関与しています。
基礎研究としては「食餌がマウス乾癬様皮膚炎に与える影響」の解析を進めており、興味深い成果が期待されます。
今後も幅広い分野の研究を続けていく考えで、乾癬やアトピー性皮膚炎の領域における新規治療法の開発や治療の指標になるマーカーの探索、治療反応性を予測できるマーカーの探索などを行い、いわゆるテーラーメイド医療や個別化医療、precision medicine(精密医療)などに役立つような研究を展開していきたいと思っています。

規則正しい生活こそ医療人の基本

私が皮膚科を志したのは、皮膚内科、皮膚病理学、皮膚外科(手術)など、皮膚に関することなら、診断から治療まで一貫して行える点に魅力を感じたことが理由でした。扱う領域が広いことも特徴です。また皮膚は比較的容易に生検できる点が、研究の面からもメリットだと感じています。
医療は直接人間を対象にする仕事なので、高度な知識・技能と同時に高い人間性(倫理感)が要求される職業です。大変な面も多いですが、その分、やりがいも大きい仕事だと思います。医学部を卒業すると、多くの方は臨床(診療)に進まれるでしょうが、臨床を続ける上で臨床研究や基礎研究の知識や考え方はとても重要になります。幅広い知識と考え方を身につけた医師を目指して頑張っていただきたいと思います。若いうちに海外に留学して、異国の文化に触れることもとても有意義なことです。
また愛と思いやりは、医療に携わるものとしての根本ですので、周囲の方々への感謝の念は忘れないようにしてください。そのためにはシンプルなことですが、規則正しく、きちんとした生活を送ることが重要です。当研究室では研究マインドを持った臨床医(フィジシャン・サイエンティスト)の育成を目指しており、その上でも、“人としてちゃんとした生活”を送ることは重要だと考えています。
日本医科大学皮膚科英文業績(2014年度以降)はこちらlink_pdf PDFが開きます。

プロフィール

佐伯 秀久大学院教授(皮膚粘膜病態学分野)

1997年  米国国立衛生研究所(NIH)皮膚科留学(研究員)
2000年  東京大学医学部皮膚科(助手)
2001年    東京大学医学部皮膚科(講師)
2010年  東京慈恵会医科大学皮膚科(講師)
2011年  東京慈恵会医科大学皮膚科(准教授)
2014年  日本医科大学大学院皮膚粘膜病態学(教授)