生殖疾患発症のメカニズムを解き明かす 解剖学・神経生物学分野 石井 寛高 大学院教授

生殖神経内分泌学研究に取り組む

石井 寛高 大学院教授解剖学・神経生物学分野では、形態機能学的手法を用いて生殖神経内分泌学研究に取り組んでいます。現在の研究課題は「生殖軸を中心とした多臓器連関とその撹乱による疾患発症機構の解明」です。
不妊などの生殖疾患の原因は、生殖器官だけでなく、生殖器官を上位から制御する中枢に原因があることも少なくありません。例えばストレスや乱れた生活習慣などで女性の月経サイクルが乱れることは、経験的によく知られています。近年、キスペプチンとキスペプチンニューロンの発見によって中枢性生殖制御機構の理解が進んだことに伴い、中枢性生殖疾患の発症機序の解明が進むと期待されています。
当分野では、キスペプチンニューロンを中心とした中枢性生殖制御機構の解明を目指し、キスペプチンニューロンを制御する神経回路の解析や、生殖軸に攪乱を加えた生殖疾患モデル動物を用いて生殖疾患発症のメカニズム解析を行っています。また、生殖軸と非生殖器官とのクロストーク解明のため、性ステロイドホルモン受容体の発現とその機能を分析するとともに、末梢から分泌されるホルモンや求心性神経入力を介した生殖中枢の調節機構を解析しています。さらに、生殖に関わる神経回路には性差が存在することが知られています。脳の性分化機構を探るため、性ステロイドホルモン作用を脳の発達段階に沿って解析し、排卵や生殖行動などの性差が明確な神経回路の制御・構築メカニズムの解析も進めています。

恒常性撹乱による疾患発症機構の解明

医学生ならば「よく学び、よく学べ」

解剖学は医学の基礎となる学問であり、解剖学の理解なくしては医学の理解と応用展開を進めることはできません。その大切な土台づくりのため、当教室は「優れた研究者は優れた教育者であり、優れた教育者は優れた研究者である」との理念のもと、教育部門としての責任を果たすことにも力を入れています。肉眼解剖学実習では献体された方の遺志を尊重して人体の構造を隅々まで目視することを大切にしており、それによって学生の皆さんには、分子的・顕微的ではなく肉眼で人体の全体像をとらえる力を磨いていただきます。
これから医学を学ぼうとする皆さんには「覚悟を持って入学してください」と助言します。私たちが担当する解剖学だけでも、皆さんが中学・高校の6年間で学んできた知識をはるかにしのぐ量であり、それを1年間で身につけなくてはなりません。ぜひ、しがみついてでも学び取る覚悟で臨んでいただきたいと思います。基礎医学の学びで得た知識は、やがて臨床で重ねていく経験と有機的に結びつき、新たな力をもたらしてくれるでしょう。
医学生には「よく学び、よく遊べ」は許されません。「よく学び、よく学べ」しかないと覚悟してください。

*「よく学び、よく学べ」は、『私の視点:医学生へ 医学を選んだ君に問う』(河崎一夫)で言及されています。医学を志す学生は、心構えとして是非一読ください。


プロフィール

石井 寛高大学院教授(解剖学・神経生物学分野)

2001年  東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻(修士課程)修了
2003年  東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻(博士課程) 修了
2006年  日本医科大学 大学院医学研究科 システム生理学分野 ポストドクター
2010年  日本医科大学 大学院医学研究科 システム生理学分野 助教
2012年  日本医科大学 大学院医学系研究科 解剖学・神経生物学分野 助教
2013年  日本医科大学 大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野 講師
2018年  日本医科大学 大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野 准教授
2022年  日本医科大学 大学院医学研究科 解剖学・神経生物学分野 大学院教授