日本医科大学の消化器内科学教室では、早期の診断・治療をモットーに、癌診療に加え、良性の機能性疾患の診療にも積極的に取り組み、全ての消化器(消化管、肝胆膵)疾患の患者さんの診療に大きく貢献して参ります。
日本医科大学の消化器内科学教室は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓のあらゆる消化器疾患を対象としており、各臓器別に確立された診療体制のもと、日中だけでなく夜間も含めて非常に多くの患者さんを受け入れています。特に夜間の緊急内視鏡検査においても専門医が対応できる体制を整備しています。
患者さんが最も心配する悪性疾患の診療に関しては、2017年11月に新内視鏡センターがオープンし、最新機器を使用した早期の消化管癌の診断、そして数多くの内視鏡治療を実施しています。当科では、上部消化管内視鏡検査は来院後2〜3日で、また下部消化管内視鏡検査も2週間以内で行える体制が整備されています。この検査までの早さも当院の特徴の一つです。内視鏡治療件数も急増しており、今後更に内視鏡部門の強化を目指していきます。また肝胆膵疾患の診療に対しても同様に早期の診断と治療を行っています。肝炎治療に関しては国内有数の治療実績を有しています。
当科の特徴としては悪性疾患だけではなく、機能性の良性疾患の診療にも注力していることが挙げられます。内視鏡検査で明らかな原因が見つからず、治療が行われても症状が改善されず、心配され当院に紹介される患者さんが近年増えています。われわれはこれらの患者さんの病態を精査するための機能検査を行い、病態に基づく治療を実施しています。
日本医科大学の消化器内科学教室は以下の診療研究グループで構成されています。
診療面では、食道の悪性良性疾患を担当しています。多くの紹介をいただくのは、薬物抵抗性の逆流性食道炎、非びらん性逆流症の患者さん、バレット食道、原因不明な「つかえ感(アカラシア)」を有する患者さんです。これらの患者さんの病態を内視鏡、食道内圧検査、食道インピーダンス検査を行い診断し、病態に基づいた治療を行います。当科はこれらの疾患に対して、病態に基づく治療を実施できる国内有数の施設です。研究面では、ガイドラインでの治療が不十分である患者さんの病態、治療に関する多くの研究論文を報告しています。また、基礎的研究としては高ガストリン血症の胃粘膜に及ぼす影響についても検討を行っています。
診療面では、胃・十二指腸の悪性良性疾患を担当しますが、得意とするのは薬物治療に抵抗する胃・十二指腸の機能性疾患である機能性ディスペプシア診療です。研究面では、胃・十二指腸の機能性疾患である機能性ディスペプシアの臨床研究、基礎研究として内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)およびH. pylori陽性胃炎患者におけるCOX-2のSNPに関する研究を行い、多くの研究論文が報告されています。また、早期慢性膵炎の疫学調査について超音波内視鏡を用いた臨床研究を肝臓グループと共同で行っています。
診療面では、小腸・大腸の悪性良性疾患を担当します。特に得意とするのは小腸疾患です。小腸は体の中で最も長い臓器であり、出血があるときも原因となる病変を発見するのが困難な臓器でした。しかし、カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡の登場により、小腸疾患の診断が可能となりました。当教室ではこれらの機器を国内で早期に導入し、現在、国内有数の小腸内視鏡検査施設として、1200例を超えるトップクラスの検査実績を誇ります。研究面では、これらの機器を用いた多くの研究論文が報告されています。また、大腸内視鏡による大腸ポリープの切除、早期大腸がんの粘膜切除術・粘膜下層剥離術などの数多くの内視鏡的治療、また炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、大腸憩室出血、憩室炎の診療も行っています。
診療面では肝臓、膵臓、胆嚢疾患を担当します。得意とする疾患はC型肝炎治療であり、C型慢性肝炎に対する直接作動型抗ウィルス薬の治療では全国トップクラスの症例数を有しています。研究面では実臨床におけるC型慢性肝炎の治療成績を様々な角度から解析した多くの研究論文を報告しています。また、難治性腹水に対するバゾプレシンV2受容体拮抗薬の治療戦略に取り組むほか、肝細胞癌に対する焼灼法の基礎的検討、胆道鏡を用いた胆管疾患の診断・治療等にも力を入れています。
内視鏡診断治療の重要性が高まるなか、臓器別による内視鏡の教育、診療には限界があり、新たに内視鏡診断治療を行う診療研究グループを立ち上げました。各グループと連携し診療を行いますが、診療面では、効率的かつ高精度な消化管癌に対する内視鏡検査の実施、消化管癌に対する安全で精度の高い内視鏡治療を行っています。内視鏡診断に関する研究では、500倍の拡大機能をもつEndocytoscopy(ECS)による胃がん診断、ECS異型診断に関する研究、また内視鏡治療に関する研究では、奥行き情報がある3D内視鏡を用いた基礎的検討を開始しており、今後の発展が期待されます。
診療面では、高齢化に伴い、放射線治療と並ぶがん治療の中心的治療法である化学療法の重要性が高まるなか、化学療法を安全かつ有効に実施できる診療体制を整備しています。研究面では、高腫瘍量切除不能大腸癌に有効な化学療法治療戦略の研究、切除不能小腸腺癌に対する化学療法の研究報告等を行っています。
現在、消化器内科学教室は、この6診療研究グループによって、本院の付属病院、千葉北総病院、多摩永山病院、武蔵小杉病院の4つの消化器内科を運営しております。診療体制の充実とともに日本医科大学の消化器内科の患者さんは年々増える一方で、スタッフの拡充は重要な課題です。まずは幅広い疾患を対象とする消化器内科全体を学ぶことのできる充実した研修プログラムを作成し、“総合力のある消化器内科医”を育成。その後、個々の専門性を伸ばすという方針で次代の人材を育成したいと考えています。
日本医科大学 大学院医学研究科 消化器内科学分野 大学院教授
付属病院 消化器・肝臓内科 部長
1994年 | 日本医科大学第3内科助手 |
1998年 | 日本医科大学第3内科講師 |
2004年 | 日本医科大学 助教授(現准教授) |
2015年 | 日本医科大学 大学院医学研究科 消化器内科学分野 大学院教授 |