清家 正博 大学院教授 人に優しい先進医療を目指して

今や肺がんは“長期生存ができる病気”へ

清家 正博 大学院教授呼吸器内科学分野では肺がん、間質性肺炎、COPD、気管支ぜんそく、呼吸器感染症、肺高血圧症など、様々な呼吸器疾患について幅広く研究を行っています。社会の高齢化が進むにつれてこれらの患者の数は増加し、医療ニーズは高まっています。その一方で専門医の数は不足しており、私たちに寄せられる期待は高まる一方であると感じています。
治療法が目覚ましい進歩をみせていることも、この分野の特徴です。特に肺がんや肺線維症などの難病については分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が登場し、素晴らしい成果を上げています。かつては恐れられていた肺がんについても5年生存率が大幅に向上するなど、“治る病気”になりつつあります。こうした先進性を背景として患者の治療に携われることは、呼吸器内科学分野で学ぶ大きな魅力といえるでしょう。
また高齢化に伴って肺がんと間質性肺炎などの合併症を有する患者も増えています。日本医科大学大学院医学研究科では両疾患に対する長年の研究実績を誇ることから、合併症を有する肺がんの治療に対しても大きな成果を上げています。さらに基礎研究で得た知見を速やかに臨床研究に応用して新しい治療に結びつけていく、トランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)にも力を入れ、基礎研究との連携がスムーズに行われています。
大学付属病院とクリニック機能を併せ持った日本医科大学呼吸ケアクリニックはユニークな施設で、例えば会社に勤務しながら外来で抗がん剤治療を続けることが可能であるなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な対応が可能です。

基礎研究での学びを大切にしてほしい

私が研修医だった時代には、毎晩のように数人のぜんそく発作の患者様が運び込まれてきました。今そうした事態はほとんどありません。前述のように肺がんも治せる可能性のある病気となっています。体に優しい低侵襲医療、個別化医療への取り組みも進んでいます。このように呼吸器内科学分野の進歩は素晴らしい成果を上げており、日本医科大学大学院医学研究科は難しい症例について国内のオピニオン的な立場を果たしています。今後もこうした歩みはさらに加速していくことは間違いなく、深夜のぜんそく発作の患者様がほとんど見られなくなったように、5年後、10年後には想像もつかないほどの進歩が得られていることでしょう。こうした革新的な進歩を最前線で実感しつつ、同時に患者のニーズに応えていくことを体験できるのは、これから学ぶ皆さんにとって大きな喜びとなるはずです。
医師を志す方は得てして専門医志向が強くなりがちですが、しっかりとした臨床力を身につけるとともに基礎研究にも取り組むことが重要です。そのために大学院や海外留学など、多様な経験を重ねて幅広く学ぶことをお勧めします。同時に人脈を広げることも大切にしてください。人に優しい次世代の先進医療の開発ために、これから学ぶ皆さんに期待しています。

プロフィール

清家 正博大学院教授(呼吸器内科学分野)

2002年  日本医科大学大学院卒業(医学博士)
2004年  日本医科大学第4内科 助手
2005年  NIH/ NCI (Laboratory of Human Carcinogenesis) 留学
2009年  日本医科大学付属病院 呼吸器内科 医局長
2010年  日本医科大学付属病院 がん診療センター 副部長
2011年  日本医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野 准教授
2015年  日本医科大学付属病院 化学療法科 部長
2017年  日本医科大学医学部 (呼吸器内科学) 教授、日本医科大学付属病院呼吸器内科部長
2022年  日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野 大学院教授