「きずあと」と「ひきつれ(瘢痕拘縮)」の治療
「きずあと」や「ひきつれ(瘢痕拘縮)」と日本医大
日本医科大学形成外科は当院救命救急センター設立時より、広範囲熱傷や多発外傷で救命された患者様を数多く受け入れてきました。また、熱傷治癒や外傷、手術後に起こるきずあと(傷あと)やひきつれ(瘢痕拘縮)に対して数多くの手術を手掛け、新たな手術法を開発・発表してきました。(真皮下血管網皮弁を用いた頚部、腋窩、手背などの再建、2次皮弁を用いた眉毛、耳介、髭の再建など)
ここ武蔵小杉病院においても、初代形成外科部長の大久保正智の時代より、きずあとや瘢痕拘縮の治療を得意分野としています。特に、熱傷・外傷後に起こる、赤く・硬く・盛り上がった肥厚性瘢痕という傷あとの治療においても全国随一の治療実績を持ち、瘢痕治療と同時に行っております。
やけどやきずの痕は現在の医学では完全に元の皮膚に戻すことはできず、患者さんだけでなく家族の方にも長期の精神的負担がかかります。我々は熱傷治療に際して、①機能の回復、②整容面回復、③患者さんに負担の少ない術式の選択、をモットーに手術方法を選択し、きず(瘢痕)や拘縮によって起こる様々な障害を取り除くお手伝いができればと考えております。
きずあと(傷痕、傷跡)について
一言で、「きずあと」と言っても様々な意味を含みます。「赤いのか、白いのか」、「盛り上がってるのか平なのか」、「線状か面状か」など、とても広い概念です。
それらを分別すると
1.成熟瘢痕
白い傷で、盛り上がりもありません。また、かゆみなどの症状もありません。あくまでも整容上の問題となります。
2.異常瘢痕(ケロイド・肥厚性瘢痕)
赤い傷で、多くは盛り上がっています。また、かゆみがあり、場合によっては強い痛みがあります。今後拡大する可能性が高く、早めの治療が必要です。
また、これら二つの分類の他に、熱傷や手術後に、「拘縮(ひきつれ)」を起こす場合があり、下記のように治療が必要となります。異常瘢痕や拘縮には密接な関係があり、いくら目立つきずあとを治そうとしても、拘縮を治さないと何度も再発を繰り返す場合が多々あるからです。
瘢痕拘縮(ひきつれ)について
1.瘢痕拘縮(ひきつれ)とは
やけど(熱傷)や外傷、手術後に傷あとが硬く盛り上がると同時に縮まります。その際に周囲の組織を引っ張るため、関節を伸ばすことが難しくなることがあり、関節自体の拘縮や成長障害をも引き起こしてしまうことがあり、早期の手術的治療が必要とされます。
2.瘢痕拘縮(ひきつれ)の治療
トラニラスト内服や外用(ステロイド軟膏やテープ)だけで治療を行うのが患者さんに負担がなく一番良いのですが、それだけで治癒しない場合もあります。その場合には、就学や成長を見定めて、適切な時期に植皮術や皮弁術による拘縮の解除を施行いたします。
3.瘢痕拘縮(ひきつれ)の問題点
広範囲熱傷を受けた患者さんや遺伝的にケロイド体質を持つ患者さんは、術後の創部が盛り上がり、いわゆる「ケロイド」「肥厚性瘢痕」の状態になってしまいます。この状態になってしまうと、再拘縮することが多く、手術が無駄になるだけでなく次の手術加療が困難になってしまう場合があります。したがって、手術時期・部位・方法は慎重に判断する必要があります。