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形成外科

ケロイド・肥厚性瘢痕はんこんの手術

治療法の選択

 ケロイドや肥厚性瘢痕は、できた部位や状態によって、最適な治療法が異なります。
 まず初めに重要なのが、手術が適切なのか、手術以外が適切なのかを明確に判断することです。後述しますが、

(1)強いひきつれ(拘縮)があるもの
(2)感染源があるもの(粉瘤、毛の埋入など)
(3)有茎性のもの

 などは手術が第一選択になる場合が多く、上記のような問題点のないものはまず保存的治療を行ってみるのが良いと思われます。ただ、耳のピアスケロイドや、へそのケロイドに関しては保存的治療に抵抗性なことが多く、手術が第一選択となります。

  • 手術の考え・方法・術後

    ケロイド手術の目的

    A)手術の選択

     保存的治療で軽快するようであれば、手術をしなくても良いのですが、上述のような状態では、必ず手術が必要です。また、目立つ所で醜状が問題であり、社会生活に支障をきたす場合は、やはり手術をすべきです。逆に、数センチ程度のケロイドはまずは外来での治療を試してみるべきです。
     従来からケロイドは安易に「手術してはならない」とされてきました。今でもそのような考えの医師は多く、上記のような酷い状態になっていても手術を躊躇する医師が多いのが現状です。しかし、我々はできる限り再発しないような縫い方の工夫をし、さらに放射線治療を取り入れることによって、これらの問題を解決してきました。

    B)縫合法

     ケロイドや肥厚性瘢痕を摘出した後に、傷を縫合しなければなりませんが、最も大切なのは再発しないように縫うことです。ケロイドは真皮から生じるため、真皮に過剰な力が加わらないようにすることが重要です。真皮より深くにある筋膜などの組織をしっかり縫い寄せて創を十分盛り上げ、創縁が何もしなくてもくっついてしまうような状態にします。*

    ケロイド手術のための縫合法

    *赤石諭史、小川令、大森康隆、百束比古.ケロイド切開後の新しい縫合法-Fascial suture technique-. 瘢痕・ケロイド治療ジャーナル. 4. 95-99.

    C)放射線照射療法


     手術後には基本的に、再発率を低下させるために、ケロイド術後に放射線照射を行います。また、あまりに大きい腫瘍に対しては、手術をしないで放射線治療のみを行うこともあります。また、若年者や、女性の乳房に対して照射を行う際は十分な注意が必要で、照射を行わず手術をすることがあります。
     現在当院では、都立荏原病院放射線治療科と協力を行い、耳のケロイドでは1~2日、胸部・下腹部・肩周りでは4日間、それ以外では3日間の外来通院で照射を行っています。


    D)手術の後療法について

     外科的治療および放射線治療で一度は完治したとしても、術後から局所の皮膚伸展を繰り返していれば、やはり再発することがあります。よってわたしたちは最低2-3年、傷の伸展を予防するためにテープ固定をおこない、術後数か月は過度の運動、仕事をさけるようにお願いしています。

    E)全身麻酔か局所麻酔か

     12cm以上だと全身麻酔下の可能性が高く、それ以下でしたら局所麻酔下で行います。局所麻酔での手術の場合、通常1時間前後で終了し、徒歩で帰宅して頂きます。ただ、へそのケロイドの場合は深部に瘢痕が続いていることが多く、全身麻酔下に摘出術を行います。

    F)術後の通院

     術後10~14日ほどで抜糸しますが、基本的には自宅で処置を行い、抜糸まで来院しません。抜糸後は、はじめは1ヶ月間隔で通院となります。状態が良くなれば、2カ月、3カ月と受診の間隔を伸ばしていきます。耳のケロイドは1年半から2年、それ以外のケロイドは2から3年の通院が最低限必要です。「切除したら終わり」という病気ではありませんので、上手く付き合っていく根気が必要となります。


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