解析人体病理学

卒前教育
 それぞれの専門分野に応じて両教室、病理部の教室員が協力、分担して行っています。病理学総論、病理学実習、基礎SGL教育、BSL教育、3学年の研究配属を通して病理学の面白さや奥の深さを理解し、医学そのものの考え方に役立つ教育を行っています。病理学により病気を理解する過程で、正常構造とその恒常性の維持や機能との関連を深める教育を行っています。それらの理解の上に、病気による正常構造の障害、創傷治癒機構とその破綻、瘢痕の形成と機能低下との関連を、視覚的基盤をもとに理解できるように教育しています。
 教育方法およびその特色として、病理学は、病気の本質を形態学的基盤の上に立って解析していくものであるため、肉眼および組織病変の視覚的な理解を深めることを重視し、マクロ標本、デスカッション顕微鏡やバーチャルスライドシステムを利用した病理組織標本の実際的な観察を行っています。研究配属に対しては、指導担当者から毎年テーマが提示され興味を持った学生を受け入れ、実際の研究を行っています。病理学各論は、基礎医学終了後に、臓器別コース授業の中に組み込まれ、臨床各科との協力のもとに教育を行っています。 基礎SGL教育では、視覚的基盤にたって病理学の特徴を生かすことができる課題で教育をおこなっています。クリニカル・クラークシップ教育では、診療の現場における病理学の役割を、手術検体・生検の病理診断、手術時の迅速診断、病理解剖に実際に参加し学んでいます。剖検の臨床病理学的な検討からは、臓器や組織の変化を、生体内で起こっていた全身の病態のなかから理解できるように考える病理学を進めています。
卒後教育
 診断病理学を含む人体病理学を修得することに加え、病理学的研究を自ら行えるようにするのが基本方針です。最終的に臨床を目指す医師にも、疾患を病理学的観点から理解し思考することができることを目標としています。臨床科から提出される検体の病理診断をおこなうことができるようになることも大切です。病理医をめざす医師には、専門領域を持って臨床診療に生かすことができる病理診断を行い、標本から病態について考察ができ、病理診断から生じた疑問や仮説を研究により解決できる病理専門医になることを目指しています。
 研究病理学は、それぞれの大学院生や医師の興味や情熱を大切にしながらテーマを決め研究を進めています。臨床診療や診断病理学からの疑問点や仮説を研究で解決をしていく、臨床診療や診断病理学と研究病理学を融合した研究を実践しています。生命科学現象を解明し、病気の本態を理解する、病理診断を深め、直接臨床に応用が可能な、診断や診療に役立つ病理学の研究を進めています。そして、臨床科からの大学院生には、臨床科にかえった後も、積極的にサポートし、共同研究や臨床病理学的研究を進められる体制を整えています。
 剖検、生検の診断病理学は、人体病理学そのものであり、初期教育として重視しています。剖検、生検、細胞診ともにスーパーバイザー制度をとり、指導しています。その中で、重要症例は症例報告を行い、また、臨床とのCPCの病理サイドを自ら 担当し、臨床的問題点と病理所見の整合性を学んでいます。
 また、将来の進路に合わせた指導を重視しており、大学院生には本人の希望を考慮して研究課題を決め、研究遂行のためのバックアップをしています。研究課題に基づき、スタッフのうち適任の一人がアドバイザーとして担当し、方法論については、必要に応じて専門領域の教室員が直接指導しています。大学院の修了後の国内および国外の専門施設への留学の機会を準備し、臨床医療や病理診断をしながら生涯にわたり研究を続けて行くことができる臨床医、病理医、研究者の育成を目指しています。