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当科の重症敗血症治療について

敗血症(sepsis)とは

全身性炎症反応症候群(SIRS、表1参照)の基準を満たす感染症のことです(※)。ようするに感染が局所に留まらず、全身に炎症がおよんだ状態です。重症度により重症敗血症(severe sepsis)、敗血症性ショック(septic shock)に分類されます。重症敗血症とは、敗血症の中で腎機能障害や意識障害などの臓器障害、あるいは低血圧などを合併するもののことです。重症敗血症の中でもさらに重症化すると敗血症性ショックと言い、十分な輸液負荷を行っても低血圧が持続し、昇圧剤の使用を必要とします。敗血症は非常に致死率も高く、いったん重症敗血症となれば、日本では約3人に1人が亡くなるといわれています。
治療としては、細菌感染であれば適切な抗菌薬の投与が基本となります。さらに重症敗血症や敗血症性ショックに対しては、厳重な全身管理も必要となります。なかには手術が必要となる症例もあります。
※日本集中治療医学会の定める診断基準に準ずる

患者背景

2011年4月1日~2014年3月31日の期間に当施設に入院となった重症敗血症患者さんの治療成績を示します。
計102名の方が重症敗血症もしくは敗血症性ショックの診断で入院されました(表2)。平均年齢 70.6±15.9歳で、男性 59名・女性 43名(図1)でした。重症敗血症の中で、敗血症性ショックの診断となった方は42名(41%)でした。敗血症の合併症の中で、血液の凝固障害をDIC(播種性血管内凝固)と言い、出血しやすくなったり逆に血栓ができやすくなったりする症状としてあらわれます。そのDICの合併率は56名(55%)でした。また、敗血症に合併する臓器障害の重症度評価をAPCHE IIスコアと言います。APACHE IIスコアは点数が高いほど重症であり、院内死亡率と相関があるといわれています。入院患者さんのAPACHE IIスコアの平均は19.8±8.1でした。

起因菌、感染部位

敗血症の治療として抗菌薬投与が重要ですが、抗菌薬の感受性が起因菌(感染の原因となる細菌)を十分にカバーしている必要があります。入院時の培養検査などで起因菌として同定された物を表3に示します。腸内細菌として知られる、グラム陰性桿菌と呼ばれるグループの菌種が最多でした。
初回の抗菌薬選択に感染部位が重要となります(図2)。感染部位から起因菌を推定して治療を行います。肺炎が最多で、腹腔内感染・尿路感染が続きます。

治療成績

当施設での治療成績を28日生存率、院内生存率として示します(図3)。それぞれ、入院後28日経過した時点、および退院(もしくは転院)時の生存率を表します。全体では28日生存率は67.9%、院内生存率は62.5%でした。

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