当科における脳神経領域の治療
当科における脳神経領域の治療
救命救急科では2022年3月現在、脳神経外科学会専門医6名(うち脳血管内治療学会専門医2名)が専従し、神経救急疾患の診療に24時間365日の体制で従事しています。自己完結型救命センターの脳外科チームとして初期治療から手術、術後集中治療、退院後の外来管理まで一貫して行うのが特徴です。主な診療分野は脳血管障害と頭部外傷です。また、けいれん重績発作の管理や、髄膜炎・脳炎、蘇生後脳症の神経集中治療なども中心となって行なっています。
当科には重症患者さんが多く搬送され、日々緊急症例に対応しています。主な治療件数は以下の通りです
脳血管障害の治療
くも膜下出血
重症くも膜下出血を中心に、年30-40例の手術を行なっています。くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤の破裂です。2021年までの11年間での破裂動脈瘤の治療数は335例でした。脳動脈瘤の根治術は開頭術、血管内治療双方の観点から、より良いと考えられる治療法をその都度検討し、早期手術を原則としています。2018年以降は国内の状況と同様、血管内治療が優勢となっています。
また、くも膜下出血の予後は、発症時の状態によるとされています。その重症度の分類として、WFNS分類というものがあります。WFNS分類は重症度によって、IからⅤの五段階に分けられますが、そのうちⅣ、Ⅴは重症とされています。当施設ではこれらの割合が全体の2/3を占めます。
《来院時WFNS grade n=335(2011-21)》
《年度別治療件数》
脳内出血
来院時昏睡の重症例を中心に治療しています。脳ヘルニアまたはそれに近い症例に対する開頭/穿頭血腫除去、急性閉塞性水頭症に対する脳室ドレナージ等です。2020年からは神経内視鏡治療を導入し、積極的に活用しています。
急性期脳梗塞
当科では当院の脳神経外科と協働し、脳卒中当番も担当しています。脳血管内治療学会専門医が複数名在籍していることから、脳主幹動脈閉塞に対する再開通療法も当科が中心となって積極的に行なってきました。施行件数は以下の通りです。
《急性期脳梗塞血栓回収療法 年度別施行件数》
*2021はコロナ感染症の影響で減少傾向
頭部外傷の治療
脳血管障害と並んで中心となるのが、頭部外傷の治療です。日本医科大学の救命救急センターは、我が国における頭部外傷のトップランナーとして豊富な診療実績を誇っています。当院へは、来院時重症頭部外傷例が多く搬送されます。診断後、まず、速やかに穿頭術(穿頭血腫ドレナージ、脳室ドレナージ)を積極的に行い早期の減圧を図り、脳圧センサー下に体温管理を先行しています。また血液凝固線溶系の推移を見ながら開頭術のタイミングを判断し、出血量の低減に努めています。
最近では、全国的に交通事故症例が減る一方、高齢者の転倒での頭部外傷が増えています。高齢の患者さんの中には抗血栓薬で治療中の方も多く、頭部外傷が重症化する場合もあるため、配慮して診療しております。
当院は多摩地区の診療拠点病院の一つであり、外傷の現場からだけでなく、他の医療機関からも転院してこられる場合も少なくありません。重症の患者さんも出来る限りの治療を行い、その後のリハビリテーション病院への転院など、患者さんやその家族に寄り添う診療を心がけております。
* 神経救急に興味のある先生方へ
当科ではチーム制を取りながら、若い先生も主治医・術者として参画しています。そのため、入職直後から専門医の指導を受けながら、多くの手術を行うチャンスがあります。大学付属病院として教育を重視しており、実際の手術や毎週行われるカンファレンスで、丁寧な指導を行なっています。当科並びに関連カリキュラムでの研修を通して、脳神経外科学会専門医、脳血管内治療学会専門医を取得できます。そのほかにも脳卒中学会、神経外傷学会、神経内視鏡学会などの関連学会の資格取得も推奨しています。他方、ワークライフバランスを重視し、旧態依然とした長時間労働は排しています。女性医師が多いのも特徴です(現在6名中4名が女性)。救命救急、神経救急に興味のある方は是非、当科の見学にお越しください。