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1.マクロファージのインフラマソーム形成制御メカニズムの解明
マクロファージ由来の炎症性サイトカインは炎症誘発の要です。様々な炎症性サイトカインの中でもIL-1とIL-18の細胞外産生は、分子複合体インフラマソームの形成によりもたらされるcaspase1の活性化を必要とします。「マクロファージでインフラマソームの形成がどの様に制御されているのか?」既にプロテオミクス解析により興味深い制御因子を複数見出しており、遺伝子改変細胞とマウスを作製し解析中です。インフラマソーム形成制御メカニズムを通して、炎症マクロファージのダイナミクスを明らかにします。
2.マクロファージ死の新たな概念の確立
Apoptosis、pyroptosis、necroptosisなど様々な種類のプログラム細胞死は各々に異なる生理作用を与えることが明らかとなりつつあります。「インフラマソーム形成による炎症性細胞死pyroptosisが他種のプログラム細胞死とどの様に関わるのか?」は現在不明です。これまでに複数のプログラム細胞死を共制御する候補分子を見出しています。今後その解析を通して、炎症環境中のマクロファージ死の在り様を明らかにし、マウス炎症モデルや担がんモデルを解析することによりマクロファージ死の意義を明らかにしてゆきます。
3.抗腫瘍免疫増強に果たす漢方薬の役割の解明
近年がん治療は術後化学療法や免疫療法の充実により長足の進歩を遂げる一方、その副作用や医療費高騰が問題となっています。ところで、がん治療の副作用軽減や術後の体力回復目的で使用される漢方薬は抗腫瘍免疫を高める可能性も有しています。実際、我々はこれまでに複数のマウス腫瘍モデルを用いて漢方薬が抗腫瘍免疫増強に果たすメカニズムの一端を明らかにしてきました。今後これらの研究を更に深化させ、安価で副作用の少ない漢方治療のがん診療現場での普及を目指します。
4.生殖免疫における自然免疫の役割-新しい流早産の概念構築を目指して
ヒトの妊娠、分娩には複雑な免疫機能の変化が求められます。母体は、父方の遺伝子を有し”異物”として認識され得る胎児を妊娠期間中母体内に保ち、かつ外的病原体からその胎児を守らなければなりません。そしてこのメカニズムの破綻が流早産を引き起こすと言われています。このような絶妙なバランスを必要とする妊娠中の免疫学的役割について、とくに樹状細胞やNKT(natural killer T)細胞といった自然免疫に注目して研究を行っています。基礎医学、臨床医学両者の架け橋となる活動を目指しています。
5.腸上皮細胞インフラマソーム活性化による食物アレルギーおよび腸管炎症誘導メカニズムの解明
インフラマソーム形成細胞としてはマクロファージがよく知られていますが、非免疫細胞である腸管上皮細胞でもインフラマソーム形成されることが報告されています。インフラマソームを形成する腸管上皮細胞はIL-18などの炎症誘発因子を産生し、食物アレルギーや腸管炎症の起因細胞となることが考えられます。腸管上皮細胞特有なインフラマソーム形成の解析、および遺伝子改変マウスにおけるアレルギー・炎症状態の解析を通して、食物アレルギーや炎症性腸疾患の病態解明に挑みます。
6.ウイルス感染症対策に向けた新しい治療戦略の開発
近年、ウイルス感染症の突発的な流行が多く見られます。これまでの抗ウイルス薬開発は個々のウイルスに対して個別に薬剤をデザインしてきましたが、開発にかかるコストや時間、薬剤耐性など、課題があります。こうしたことから、単剤でできるだけ多くのウイルスに効果を示す薬剤の開発が急務となっています。この目標に向けて、主にRNAウイルスを抑制する細胞内自然免疫に関わる新規宿主因子を探索し、抗ウイルス活性のメカニズムを解明するとともに、それに基づいて新しい治療戦略を構築する研究を進めています。
7.多発性骨髄腫における腫瘍免疫抑制機構の解明および免疫療法の開発を目指して
多発性骨髄腫は形質細胞由来の腫瘍であり、未だに治癒困難な造血器腫瘍の1つであります。治癒困難な要因として骨髄腫においては種々の免疫異常が報告されており、免疫異常の亢進が病勢進行に強く関連しているとされています。免疫異常の解明が完全治癒に向けた治療開発には重要と考えられます。特に、骨髄腫細胞上に発現する様々な新規免疫関連分子の発現や樹状細胞の機能低下に着目して、多様なアプローチから病態との関連を明らかにする研究を行っており、更に免疫治療への応用を目指しています。
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