日本医科大学精神医学教室は昭和22年の教室開設以来70年の歴史があり、昭和42年に当時飯田橋にあった付属第一病院から千駄木の付属病院に診療・教育・研究の中心を移した後、現在は付属病院、千葉北総病院、武蔵小杉病院、多摩永山病院の4病院において診療・教育・研究を行っている。

 診療面では、付属病院においては精神神経科として32床の精神科病床を持ち、外来診療とあわせた診療を行っている。千葉北総病院においては、メンタルヘルス科として外来診療を中心に、他科との共用病床を使用しての入院診療も行っている。武蔵小杉病院、多摩永山病院は専らコンサルテーション・リエゾン診療を行っている。当教室では伝統的にコンサルテーション・リエゾン精神医学に熱心に取り組んできた。現在も付属四病院いずれにおいても救命救急センターや院内各科と協力して一般病床におけるコンサルテーション・リエゾンサービスを積極的に行っている。診療面のその他の特徴としては、パルス波治療器を用いた電気けいれん療法を早くから取り入れ、主に難治うつ病に対する治療を行っている。また、スタッフの多くは精神保健指定医、精神科専門医だけではなく、総合病院精神医学、老年精神医学、児童青年精神医学、睡眠学、てんかん、産業精神医学等の専門医・認定医を取得しており、それぞれの専門性を生かした診療に従事している。

 教育面では、大学付属病院としてCCやSGL等を通して日本医科大学医学部生の教育を行っている。現在の臨床研修制度において精神科は選択必修科目となっており、当教室においても各研修協力施設の協力を得ながら研修医にとって必要な精神医学および全人的医療の習得を目指した教育を行っている。当教室では卒前教育及び初期研修において、精神医学の知識・技術の取得のみならず、医療の背景にある精神的・社会的諸問題も考える総合的視野を身に付けることで良き医師-患者関係を築ける医師を育成することを目標としている。この他に看護学校に講師を派遣するなど様々な形で精神医学の教育に携わっている。後期研修では、精神保健指定医と精神科専門医の取得が出来るように教育プログラムが組まれ、その間には関連病院にて2年間の地域精神医学研修も行っている。また各自のsubspecialtyに応じて、総合病院精神医学、老年精神医学、児童青年精神医学、産業精神医学などの専門分野での専門医・認定医取得が出来るように指導が行われている。

 研究面では、これまでも精神・神経生理学的研究を中心にコンサルテーション・リエゾン精神医学、臨床精神医学、精神薬理研究、時間生物学的研究が行われていたが、最近はより画像解析を用いた研究に力を入れており、独立行政法人放射線医学総合研究所、スウェーデンのカロリンスカ研究所等国内外の多岐に渡る施設との協力体制のもと主にポジトロンCTを用いた機能性精神疾患の病態診断研究や向精神薬の薬効評価に関する研究を積極的に行っている。国内施設では、放射線医学総合研究所、東京芸術大学等と研究生や共同プロジェクトを通じて交流があり、海外研究施設では、これまでUniversity of Iowa、New York State University、Albert Einstein Medical School、Cornel University、Karolinska Institutetと留学や共同研究での交流がある。