外科学(内分泌外科)
内分泌外科学 杉谷 巌 大学院教授 |
本学の卒前教育は国際認証に向けて改革中です。しかしどのように学生教育が変遷しようと、その指導方針の原則は、あくまでも学生が自主的に学習する高いモチベーションを持ち続けるよう指導することに変わりはありません。近年の国家試験の出題傾向を見ると大変広範囲にわたっており、教師側から一方的に教える体制ではすべての領域をカバーすることは困難です。従って、教科書、参考書を主体に学生自身が自主的に勉強する姿勢がないと必要最低限の医学的知識に欠如する部分が生じる危険性があります。このような観点から講義は、ビデオ、スライド、講義ノートなどを多く使用した臨床講義的色彩の強い、Problem based medicine, Case based study方式をできるだけ採用するように心がけ、取りこぼしのない教育を行っています。
さらに重要な教育目標は、実臨床の場において(第4学年から始まるClinical clerkship)を通して人間性(humanity)に富んだ医師を育成することです。もちろん、医学は科学的データの基に成立していますが、あまりにデータ重視の立場からのみ医学、医療をとらえると、患者さんからの信頼を得ることはできません。人間性、すなわち患者さんに対する優しさ、思いやり、コミュニケーション能力に欠けた医師は、どれほど医学的知識、医療技術のレベルが高くても良い医師とはいえません。このような医師としての基本姿勢は学生時代に培われるものであります。
外科専攻医としての研修は、前期研修医での知識、経験を基に専門分野に進む入り口として、前述の医師像を具体的に体験、実践して学び、自分のものにする重要な場です。専攻医として当科を選択した専修医に対する教育には心血を注いでいます。最初の1年で内分泌外科研修のほか、呼吸器外科、心臓血管外科などの臨床研修も希望期間行うことができます。さらに次の1年間は充実した関連施設において消化器外科を中心とした一般外科の研修を行います。この2年間は極めて重要な時期であり、どのような外科的疾患に対しても対処できる外科医としての基礎を、前期研修医期間も含め卒後4年で築き上げる事ができます。この時期の多岐にわたる臨床経験は、早期の外科専門医取得のためにも役立つことになります。
その後は、当科の誇る内分泌外科関連施設においてさらに2年間十分な臨床研修を行います。どの施設においても年間300~500例を超える甲状腺・副甲状腺疾患を術者または助手として経験することが可能であり、最短では外科専門医を卒後5年で、内分泌外科専門医を卒後7年で取得することが可能です。
また、国内のみならず国際学会での学会発表、論文発表も積極的に行っています。毎年受け入れている留学生との英会話経験も力となり、早くからの国際学会での活躍を期待しております。当科では、チェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌検診、あるいは福島原発事故後の小児甲状腺検診などのボランティア活動も盛んであり、国内外でのこうした社会貢献活動はメディアや省庁、医師会等からの評価も高く、今後も若手医師の参加を大いに歓迎しています。