黄斑外来

対象疾患

加齢黄斑変性症、近視に伴う黄斑変性、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜前膜、黄斑円孔、強度近視、病的近視、近視性脈絡膜新生血管、特発性脈絡膜新生血管、網膜色素線条、AZOOR complex症候群、黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)、ピット黄斑症候群、pachychoroid pigment epitheliopathyなど。
 
加齢黄斑変性症は50歳以上に年齢とともに起こってくる疾患です。欧米では成人の失明率の第一位となっており、近年、日本でも患者数が増加してきています。網膜の黄斑部という視力に一番大切な部位に病気が起こります。加齢黄斑変性症には萎縮型、滲出型の2つの病型があります。萎縮型は網膜が萎縮していくタイプです。滲出型は網膜の下にある脈絡膜から新生血管が発生し、そこから出血を起こしたり、血液中の血漿成分がもれだしたりして網膜に浮腫を起こしたり、網膜剥離を起こしたりします。症状は中心部のゆがみ(変視症)から始まり、進行すると中心にある病気の部分の視野が欠けてしまい(中心暗点)、視力が極端に低下します。

検査

フルオレセインナトリウム(FA)蛍光眼底造影撮影、ICG蛍光眼底造影撮影、OCTおよびOCTアンギオで滲出型加齢黄斑変性症の病気のタイプ、進行の程度を判定します。当科では広角眼底写真撮影をOptosを用いることにより、通常の眼底写真、FA、ICGを同時に行うことで短時間に全ての眼底検査を行うことが可能です。

治療

加齢黄斑変性症の治療には、1.抗VEGF抗体 2. 光線力学療法(PDT) 3.直接光凝固術 4.経瞳孔温熱療法 5.手術療法 などの治療法があります。
 当科では抗VEGF抗体の投与を第一選択とします。まず初めに導入時に3回固定打ちを行います。その後、薬剤により1カ月毎あるいは2カ月毎に注射を行い、眼底の評価を行いながら病気の活動性が治まることを確認します。落ち着いたところでTreat And Extend (TAE)法といって、来院および投与間隔を2週間延長し治療を行い、滲出が再燃すれば、投与間隔を2週間短縮し治療を行うという方法です。日本医大黄斑外来では、TAE法を最大16週まで延長し、再燃なく16週間隔を連続3回達成できれば、経過観察に移行するようにしています。
ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に対しては、抗VEGF抗体が認可されるまで、PDTが主に行われていました。PCVに対し、PDTは有効な治療法ですが、単独治療では、網膜出血や急激な視力低下を伴うことがあり、視力良好な症例に対し行いづらい欠点がありました。現在は大規模臨床試験である、EVERST試験、EVERSTII試験で抗VEGF抗体単独と抗VEGF抗体とPDTで比較したところ、PDT使用により大幅なポリープの退縮効果が得られることがわかりました。日本医大黄斑外来では、積極的にPDTを活用し、治療に役立てています。PDTの説明ですが、光感受性物質であるベルテポルフィンを注射し、その後弱いレーザー光線をあてることにより治療します。ベルテポルフィンは光で活性化され活性酸素を発生し、それにより新生血管を障害します。ベルテポルフィンは新生血管に取り込まれやすいので、新生血管を標的に治療することができ、正常網膜にはほとんど影響を与えません。治療後は光による副作用(光過敏症)が報告されているため治療後48時間、日光、コピー機の光、車のライト(ハロゲン)、ネオンなどの光を避けて過ごしていただきます。
  
Pachychoroidとは脈絡膜肥厚をはじめとする複数の臨床的特徴を含む概念のことであり、近年注目を浴びている分野です。従来の滲出型加齢黄斑変性とは異なり、ドルーゼンを認めず、網膜色素上皮下に脈絡膜血管新生を有するものです。今後、OCTの画像所見を踏まえて治療方針を決めていく時代が来たと考えております。例えば、病的に肥厚した脈絡膜やpachychoroidの所見の場合では、PDTやアフリベルセプト、薄い脈絡膜やpachychoroidの所見のない場合ではラニビズマブといった脈絡膜に注目した個別化治療が今後の戦略として用いられていくと考えられます。
  かつては有効な治療法がなかった加齢黄斑変性症ですが、進行をとめることができるようになってきました。また、視力が向上する方もいらっしゃいますので、是非日本医大黄斑外来にご相談下さい。