日本医科大学
JST
日本医科大学先端医学研究所病態解析学部門の高野晴子講師、福原茂朋大学院教授を中心とした研究グループは、血管内皮細胞が肺胞の形作りを調節する、新たなメカニズムを発見しました。
肺は、呼吸における酸素と二酸化炭素の交換を担う生命維持に欠かせない臓器であり、このガス交換を担う場が、「肺胞」です。肺胞は小さな袋状の構造をしており、内面を覆う肺胞上皮細胞とそれを裏打ちする血管内皮細胞が密に接着することで、肺胞内の空気と血液の間のガス交換を可能としています。肺には数億もの肺胞がありますが、重度の肺疾患では肺胞が破壊され呼吸が困難となり、死に至ることもあります。これまで、壊れた肺胞を効率的に再生させる方法は確立されておらず、その実現には肺胞という複雑な構造が作られる仕組みを理解する必要があります。今回、研究グループは、血管内皮細胞は、筋繊維芽細胞の足場となる基底膜を形成することで、筋繊維芽細胞による肺胞形成を制御していることを発見しました。本研究成果は、肺胞形成における血管内皮細胞の新たな役割とその制御メカニズムを明らかにしたものであり、感染性呼吸器疾患や慢性閉塞性肺疾患などの難治性の呼吸器疾患において、肺胞の再生を促す新しい治療法を生み出す可能性があります。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、2024年3月4日(月)にオンライン版で発表されました。