日本医科大学
東京理科大学
日本医科大学解析人体病理学の遠田悦子助教、澤田杏里大学院生、清水章教授らの研究グループは東京理科大学との共同研究で、免疫細胞の一種であるマクロファージの働きを制御する細胞内タンパク質FROUNT(フロント)を阻害することで糸球体腎炎を抑制できることを新たに発見しました。
本研究は、2022年11月18日に国際腎臓学会誌「Kidney International 」に掲載されました。
腎臓にある糸球体に障害が起こる糸球体腎炎は、腎臓がうまく働かなくなる腎不全の主原因疾患の一つです。現在の治療法の効果は限定的であり、新しい治療薬が求められていました。糸球体腎炎の進展機序にはマクロファージが重要な働きを担っていることから、研究グループが以前に発見したマクロファージの遊走と活性化を調節する分子FROUNTに着目しました。既存のアルコール依存症治療薬であるジスルフィラムには、FROUNTを阻害する働きがあり、今回の研究では、これをラットの腎炎モデルで投与すると、糸球体へのマクロファージの集積が抑えられ、この疾患に特徴的な糸球体病変である半月体形成を著明に抑制し、腎臓の障害を示す蛋白尿を改善できることが分かりました。腎不全の原因となる難治性の腎炎の治療に、FROUNTを阻害する既存薬ジスルフィラムが活用できることが期待されます。