卒前教育

 「生命とは何か」を問う学問である生物学は、今世紀に入り生命科学の基礎学問として大きな発展を遂げ、その基本概念や知識の修得は医学を学ぶために必要不可欠なものとなっています。当教室の講義では、分子生物学、細胞生物学、発生生物学などの分野を中心に、医学の基盤となる生物系の学力を育むことを目標としています。特に、進化の過程で保存されてきた重要な生命現象に焦点をあて、そのしくみを解き明かしていく科学的思考力の育成に主眼を置いた指導を行っています。また、ヒトという「生物」を対象にした医学を学んでいくためには、生命現象の面白さや奥深さに感動し、生命の尊厳を心に刻みつけておくことが大切です。生物を対象とした実験を通じて、生命現象そのものへの興味を高めることを目指しています。
 第1学年では主として「生命科学基礎(生物)」、「生命科学概論(生物)」(座学と実習から構成)、「細胞の構造と機能」、「組織・臓器の発生、構造と機能1」を担当しています。
 「生命科学基礎(生物)」は、入学時の受験科目による学力差を是正するために、生物学非受験者を対象として開かれる科目です。真理探究の精神を育む大学本来の教育を早期に実現するため、一人一人の学生をサポートしていきます。
 「生命科学概論(生物)」は、基礎医学への橋渡しとなる科目です。座学では生命の基本単位である「細胞」という概念を学び、細胞レベルから分子レベル (ミクロ)へ、また個体レベル(マクロ)へと、生物を包括的に理解することを目標としています。さらに、人体発生の基礎として、生殖子形成から着床までの概略を学びます。また、実習では多種多様な生物と1対1で厳粛に向き合い、観察や実験を通じてその構造と機能について学びます。生命現象への興味を高め、自主的に学び考える学習態度を見につけることを目指しています。
 「細胞の構造と機能」では、進化生物学の基礎を学び、ヒトの進化的位置付けや、モデル動物を用いた生物学研究と医学との関連について理解することを目標としています。
 第2学年では主として「組織・臓器の発生、構造と機能2」を担当しています。人体発生の基礎として、第1学年につづいて原腸形成、神経誘導、器官形成などの概略を学び、その分子メカニズムを先天異常や再生医学と関連づけて理解することを目標としています。
 この他、第3学年の「科学的探究3」では、分子生物学や免疫組織化学などの手法を使って動物実験を行い、研究の魅力や科学的考察の面白さを体験することを目指しています。

主な研究内容

 当教室では、消化管幹細胞の制御機構に関する分子発生生物学的な研究を行っています。甲状腺ホルモンによって幹細胞が活性化されるアフリカツメガエルを実験モデルとし、遺伝子組換えや器官培養、in situ hybridization、免疫組織化学などの手法を駆使して幹細胞ニッチの解明を進め、消化器系の再生医学の発展に寄与できる基礎研究を目指しています。