医学部長のご挨拶





日本医科大学医学部長
近藤 幸尋











































【伝統】自由な気風と反骨精神

 本学は日本最古の私立医大です。大学の気風というものは一朝一夕に出来上がるものではありません。確かに最古ですが、済生学舎から医科大学に至る道のりは険しいものでした。当時の政府や医学界からの弾圧は猖獗を極めました。それでも医師を養成し続けたことで、一旦は廃校に追い込まれました。廃校まで28年間に養成した医師数は9628人で、当時のわが国の医師の約半数に登ります。創立者長谷川泰は自由党議員でした。本学の反骨と自由の気風がわかると思います。

【学是】克己殉公

 権力に対する反骨精神は、すなわち弱き者への愛の深さに他なりません。当時は今と全く違います。今は民主主義であり、権力そのものが民主的に形成されていますが、当時はそんな生易しい時代ではありません。権力に対する反骨は命がけです。本学の学是「克己殉公」はその歴史的流れの中で生まれたものです。医師の倫理観にとどまらず、民衆のために権力と戦うことも辞さないという正義を貫くための決意なのです。そんな本学がいち早く医科大学として認められたのは、本学で養成された医師のレベルの高さを認めざるを得なかったということを如実に物語っています。


【先進的医学教育】

 最も進んだ医学教育を受けた医師と、旧式な医学教育を受けた医師のどちらにかかりたいか? 答えは明白です。実は日本医科大学の「常に最も進んだ医学教育」こそが、旧態依然の教育に安住していた当時の医学会の重鎮たちが最も嫌ったことでした。最も新しい医学教育を提供することが済生学舎以来の伝統なのです。
 現在の日本医科大学のカリキュラムはアウトカム基盤型カリキュラムと呼ばれるもので、「卒業時にどんな姿になっているか」から逆算して教育を組み立てています。8つの目標(コンピテンス)には研究マインド、国際性、教育能力まで含まれています。キーワードは能動的学修であり、それを支えているのが先端的ICT技術です。すべての講義は収録されていて、いつでもどこでも視聴できます。ディスカッションするときは少人数収容の無数の個室で電子黒板を活用できます。学修支援システム上の自分の電子ポートフォリオで学修状況を把握し、計画的に自分を磨くこともできます。研究室への配属や留学も奨励しています。


【生涯勉強!】

 本学の医学教育の帰結は、一生勉強する医師を育てることに他なりません。日本医大出身者の臨床能力の高さと学会等における活躍は、生涯学修に対して取り組む姿勢の賜物です。本学の教育理念「愛と研究心を有する質の高い医師と医学者の育成」の意味がここに帰結するのです。