大学院医学研究科長のご挨拶
大学院医学研究科長 桑名 正隆
多様化する社会・医療ニーズに対応できる豊かな国際性・フレキシブルで高い専門知識と倫理観を有する医学者・良医を育成する大学院医学研究科長
桑名 正隆
2023年4月1日付で大学院研究科長を拝命した桑名正隆です。本学には2014年よりアレルギー膠原病内科大学院教授として就任し、大学の発展を膠原病・リウマチ内科領域から支えて参りました。今後はより広い視野から大学のさらなる発展に貢献する所存です。
21世紀を迎え医療は複雑化し、また社会から医療に向けてのニーズは多様化しています。その基盤となる医科学研究も単純な手法で遂行できるものも少なくなってきています。またAIやデータサイエンスの発達などにより今後人が主体として行う医療や研究はどうあるべきかが問われています。
そのような中で医療者は医科学領域の幅広い視野とフレキシブルな感性、豊かな人間性、国際性、高い倫理観を学ぶ必要があります。特に医学の研究・論文発表においては様々な細かい法があり、そのような中で、コンプライアンスを守りつつ、自由な発想で、professional autonomyに基づいた研究を誠実、真摯に推進するためには、系統的な学習と研鑚が必要となります。本学大学院はまさしくその場を提供するために組織されています。
本学は平成13年度に私立医科大学として初めて大学院重点化宣言をし、現在まで継続して大学院の重点的整備を行ってきました。平成19年度には基礎医学大学院棟が完成し、研究施設を充実させました。平成28年度からは、学問分野を超えて高度化・多様化する医療動向を見据えた体系的かつ実践的な大学院教育を推進するために、46分野からなる6専攻を、3つの研究領域からなる1専攻に再編し、習得単位に共通科目・体系的コースワークを拡充しました。さらに社会人選抜制度を整備し、学ぶ意欲のある学生に対し医学研究の門戸も拡げています。
開校以来、本学は自由な校風の下に分野横断的に連携して研究活動を行う土壌が培われています。私立大学戦略的研究基盤形成支援事業など複数の大型公的研究費を獲得し、分野を超えて研究成果を上げてきました。今回の再編によって、従来の専攻毎の教育・研究構造から脱却し、各分野の研究の有機的な融合をより容易にすると共に、将来の医学・医療を牽引していく大学院生に、実質的な教育体制を提供していきます。大学院の充実と併せて、共同研究において機能していた複数の施設を、平成28年度より共同研究施設として一元化し、さらに有機的かつ機動性をもって研究が行える体制整備を開始しました。また、東京理科大学、早稲田大学と学術協定を締結し、理・工学分野と医学分野の連携による次世代の医療科学技術創出を積極的に推進しています。
社会が国際化し、医療・医学研究は欧米のみならずアジアとの連携が益々重要となってきます。国際交流センターを窓口として、長い交流の歴史を持つアジア各国の協定校から毎年大学院生や若い研究者を広く受け入れています。また若手研究者の海外留学支援を積極的に行ってきました。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって一次ストップしていた国際交流も再開されています。
本学は「愛と研究心を有する質の高い医師、医学者の育成」を教育理念として、過去に多くの卓越した医師・医学者を輩出してきました。医学は倫理的、科学的に自己を磨き続けるべき学問であり、学部から大学院、そして生涯に亘り、継ぎ目なく学び続けることが求められています。本大学院では、そうした社会の信頼に応えることができる、質の高い医学研究者および医師を今後も育成して参ります。