乳がんの検査と診断~ステージと生存率は~
乳がんの頻度
日本人女性のがんにおいて、乳がんは最も頻度が多く、2017年のデータでは9人に1人が乳がんになっています。年々増加傾向で、乳がんにかかる(罹患する)ピークは40歳代と60歳代にあります。このため40歳以上から定期的にマンモグラフィの検診を受けることが大切です。なお、男性乳がんは乳がん患者100人のうち1人未満と言われています。
乳がんの原因
乳がん患者さんのうち、5〜10%は家族性、遺伝性と言われています。
その他の多くの患者さんにおいて、乳がんになった原因が明らかになることはなく、何が悪かった、ということはありません。乳がんになるリスクとしては、女性ホルモンのエストロゲンとの関わりが強いため、初潮が早い、閉経が遅い、出産歴や授乳歴がない、などが挙げられます。また、喫煙、閉経後の肥満などライフスタイルに関連するリスク因子もあります。
当院受診と検査の流れ
初診日には問診(気になる症状についての詳細、検診受診歴、既往歴、家族歴など)、視触診、マンモグラフィ(乳腺のレントゲン写真)、乳房超音波(エコー検査)を行います。状況に応じて同日中に細胞診や針生検などの精査を行います。その結果は約1週間後にお伝えします。また、異常乳頭分泌のためご紹介いただいた場合、乳管内視鏡の予約を行います。
他院で乳癌の診断を受けている場合、病状、進行度(ステージ)の把握のために血液検査、画像検査の予約を行います。わかっている情報から、今後の治療についての見通しもお話できることがあります。
乳がんの診断方法
視触診、マンモグラフィ、乳房超音波検査などをもとに病変を見つけ、良悪の推測を行いますが、確定診断には病理学的検査(顕微鏡でがん細胞を確認すること)が必要です。
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- 細胞診:簡易的な検査です。病変と思われる部位から細胞を採取したものを顕微鏡で調べ、がん細胞かどうかを判断します。
- 組織診(生検):組織を塊として採取し、顕微鏡で調べる検査で、確定診断になります。悪性で乳がんの場合、サブタイプも調べることができます。
乳管内視鏡検査について
乳頭から血が出るなどの異常乳頭分泌に対して、当院では乳管内視鏡による精査が可能です。乳管内視鏡とは異常乳頭分泌が乳がんによるものなのか否か、原因を探るための検査です。分泌がある乳管の中を、太さ0.8mmの内視鏡で観察します。乳管内にポリープのような病変があれば、吸引して採取し、組織診断を行うことができます。また、乳管内を洗浄した液体を細胞診に提出することができます。観察できる範囲は乳管の太さ、乳管内視鏡の長さなどにより制限されますが、他の画像所見と合わせて精査、フォローを行います。
乳がんのステージと生存率
下記は国立研究開発法人国立がん研究センターによるデータです。ここで記載する相対生存率とは、交通事故など乳がん以外の死因を取り除き、性別や年齢を考慮したもので、女性のデータを示します。
●乳がんの5年相対生存率(2009年から2011年までの集計)
ncc_press_release_20200317_01.pdf
全臨床病期 93.7 %
ステージ I 100.0 %
ステージ II 96.1 %
ステージ III 80.0 %
ステージ IV 40.0 %
●がんの10年相対生存率(2003年から2006年までの集計)
ncc_press_release_20200317_02.pdf
全臨床病期 85.9 %
ステージ I 97.6 %
ステージ II 87.4 %
ステージ III 61.9 %
ステージ IV 18.3 %
なお、これらは過去のデータの蓄積であり、その後、新しく有効な治療薬が複数保険適応となっています。生存率の数値は参考程度にとらえていただき、現在できること(治療)を行いながら日常生活が送れるよう、サポートしてまいります。