弁膜症手術および不整脈(心房細動)手術
心臓には4つの部屋(左右の心房、左右の心室)で構成され、その部屋の間には弁とよばれる扉が4つ存在します(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)。
心臓弁膜症とはこれら弁(特に大動脈弁・僧帽弁・三尖弁)が正常に機能しなくなった状態をいいます。弁が硬くなり十分に開くことができなくなったものを狭窄症、またしっかりと閉じず逆流を生じる状態を閉鎖不全症といいます。どちらも薬の服用によって心不全の症状を軽減することができますが、治癒することはありません。したがって、薬の服用にもかかわらず息切れや胸痛、動悸や足のむくみなどの心不全の症状が出る場合や、心臓の収縮力が悪化していく場合は外科治療がすすめられます。
弁膜症手術は傷んだ弁を修復する弁形成術と弁を代用弁に取り替える弁置換術があります。
可能な限り自分の弁を温存する弁形成術が望ましいのですが、やむをえず弁置換術が必要な場合には人工弁として機械弁と生体弁のどちらかを使用します。弁形成術と生体弁を使用した弁置換術では血栓(心臓や血管の中で血液が固まること)予防のための抗凝血薬(ワーファリンと言う薬剤です)の服用が不要となり、出血のリスクが少なくなります。このため、高齢の方や妊娠を希望される方にとって弁形成術や生体弁の使用は第一選択となりますが、患者さんの希望や生活環境にあわせて適宜、選択いたします。叉、当施設では小さな傷で胸骨を一部分のみ切開、または全く切らずに乳房の下部を小さく切開して手術をする低侵襲心臓手術も行っています。
弁膜症では高率に不整脈、特に心房細動を合併します。
心房細動とは心房という小さな部屋が一分間に300~500回とぶるぶると震える状態で、脈が不規則となります。短い発作で終わるものや、長時間にわたり続くもの、持続して止まらないものに分けられますが、いずれの心房細動も、動悸などの症状が出現し、また心臓の機能へ影響をおよぼすこともあります。さらに、心房内に出来た血栓が心臓から流れ出して血管を閉塞させる血栓塞栓症という状態を引き起こします。脳の血管が詰まって脳梗塞を発症すると生命の危険に直面することがあり、心房細動を有する患者さんでの発症率は健常人の2~6倍と高く、さらに弁膜症に心房細動が伴うと10倍以上にまで上昇するという報告もあります。
心房細動の手術はメイズ手術とよばれる心房を迷路(メイズ)状に切開、縫合する方法がよく知られていますが、当施設ではこのメイズ手術ではなく、心房の機能回復の点からすぐれているラディアール手術を行い、これまでに多くの患者さんたちの心房細動を治療してきました。
叉、この他にも手術中に最新のコンピューターシステムを用いたマッピング(心臓の電気信号を画像として解析)によって患者さんの心房細動の原因をつきとめ、それぞれの患者さんに対して最も負担が少ない手術方法を選択することも可能です。当施設はこの心房細動の研究、治療に関しては長い歴史を有し、国内外ではリーダー的役割を担っていると自負しています。前述の弁膜症に心房細動を生じている患者さん、あるいは内科治療では改善しない心房細動への外科治療が必要な患者さん方に対して、術後は抗凝固薬の内服が一切不要の生活を送れるよう手術治療を行うことが当施設のモットーです。
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