脳動静脈奇形

脳動静脈奇形(のうどうじょうみょくきけい)について
Cerebral arteriovenous malformation

概要

動脈と静脈が直接繋がって(短絡して)出来る異常な血管網が病気の本態です。

症状

  1. 頭痛
  2. 脳出血(脳出血による症状は、その出血の場所により様々で、半身麻痺、視野狭窄、痴呆症状、失語、意識障害等の様々な神経症状を引き起こします。)
  3. けいれん発作
  4. 症状が無く、脳ドッグなどで偶然発見される事もあります。

主な検査

  1. MRI、CT
    その存在部位、周囲の正常脳組織との位置関係などを検査します。
  2. 脳血管撮影
    脳動静脈奇形の診断、治療方針の決定に欠かす事の出来ない大切な検査です。この検査により、脳動静脈奇形の大きさ、場所、形、そしてこの奇形に関与する動脈、静脈の数などを検査します。

治療法

脳動静脈奇形の治療には、大きく分けて3つの治療方法があります。開頭手術による外科手術、脳血管撮影と同様なカテーテルを用いた塞栓術、特殊な放射線治療(ガンマーナイフ)です。これらの治療方法を単独または、組み合わせて治療を行います。

それぞれの治療法によって、脳動静脈奇形の場所、大きさ、関与する動脈などによって向き不向きがあります。全ての脳動静脈奇形に対して、全ての治療法が行えるわけではありません。そのため、個々の患者さまによって、治療方針は異なってきます。また、脳動静脈奇形の大きさ、場所、臨床経過によっては、治療をせずに経過観察とした方がより良いと判断される場合もあります。それは、脳動静脈奇形の特徴として、不十分な治療は、脳動静脈奇形からの出血率を悪化させる事が知られており、根治を目指した治療を行う事が重要だからです。そして、どんな病気に対するどんな治療も合併症を0%にする事は不可能だからです。
日本医科大学脳神経外科学教室では、脳神経外科の専門医、脳血管内治療(カテーテル治療)の専門医が連携して個々の患者さまの画像検査の結果を検討して治療にあたっております。

(1)薬による治療

脳動静脈奇形に対する薬による治療法はありません。しかし、けいれん発作が起きている場合はその治療のため抗けいれん剤の服用が必要です。

(2)開頭による外科手術

脳動静脈奇形の治療の中心をなす治療法です。
脳動静脈奇形に関与する動脈、静脈、奇形部分本体を周囲の脳組織から剥離して、摘出します。脳動静脈奇形の大きさ、場所によって手術の難しさは異なりますが、正常な血管と、異常な血管を見分けながら、奇形部分のみを取り出す必要があり、脳神経外科手術の中でも難しく、そして時間のかかる手術の一つです。
脳出血による半身麻痺と意識障害で発症した患者さまの治療前後の血管撮影を下に示します。(赤線内が脳動静脈奇形の部分)

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手術中の血管奇形部分の写真。青丸部分に拡張した血管網が見られます。(下図)

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(画像は、日本赤十字社医療センター 脳神経外科 野村竜太郎先生のご好意による)

(3)脳血管内塞栓術(カテーテルによるもの)

細いカテーテルを脳動静脈奇形に関与する動脈に選択的に挿入し、このカテーテルから塞栓物質と呼ばれる物質を動脈から注入して脳動静脈奇形を閉塞してしまいます。正常な血管に塞栓物質が入らない様に高度な技術が必要です。

(4)放射線治療(ガンマーナイフ、サイバーナイフ)

動静脈奇形部分に集中的に放射線を照射する治療法です。小型の病変が治療対象となります。サイバーナイフ治療の前後のMRIと血管撮影の画像を下に提示します。

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(画像は、日本赤十字社医療センター 脳神経外科 野村竜太郎先生のご好意による)

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(画像は、日本赤十字社医療センター 脳神経外科 野村竜太郎先生のご好意による)

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