放射線科(技術)
はじめに
放射線科の技術職として、病院理念と基本方針に基づき、患者さんに安心で安全な質の高い放射線診療(画像診断と放射線治療)の提供に日々努めています。
また、機器の安全管理や医療被ばくの最適化、医療安全などを重視すると共に、高度な専門知識と技術力の習得などの人材育成にも組織的に取り組んでいます。
当部門のおもな診療科目・検査内容
一般撮影検査
広くレントゲン検査として知られているX線単純撮影です。医療用X線発生装置からX線を発生させ、体内を透過するX線の吸収差(強度)を画像化しています。CTやMRIなどの画像診断が発達した現在でも、画像診断の重要な役割を担っています。
当院には7台のX線撮影装置が導入され、全てデジタル撮影システム(FPD装置)です。また撮影画像は部位や目的に応じて最適な画像処理を行った後に各診療科へ提供しています。
【撮影に関する注意】
・妊娠中または妊娠の可能性がある方は、撮影を行う前に担当技師にお伝えください。
・ボタンや湿布薬、厚手のプリントなど、診断の妨げになる可能性があるものは必要に応じて外していただきます。
乳房撮影検査
マンモグラフィ(MMG)とは、乳房を平らな板で圧迫しながら撮影を行い、乳房内の微小石灰化や腫瘤影、乳腺組織構造を描出する乳房のX線撮影検査です。病院では上下方向と斜め横方向の2方向を標準撮影としています。
当院はFFDM装置(デジタルMMG)を国内でも逸早く導入し、現在は2台の装置で検査を施行しています。また、1台の装置にはトモシンセシス(デジタル断層撮影)機能が装備されており、断面像の描出が可能です。更に取得データから2D、3D画像を再構成することが可能であり、従来マンモグラフィでは描出することが困難であった病変を描出することを可能としています。
マンモグラフィ診断において、石灰化の画像による良悪性診断が困難な症例も多く、的確に組織標本を採取して病理診断を行う必要があります。そのため、乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術(一般的にマンモトーム生検の名称)も施行しております。
全ての検査結果は、検診マンモグラフィ読影認定取得の放射線科専門医によって診断され、各診療科へ提供しています。
【撮影に関する注意】
・ペースメーカーなどを入れている方や豊胸術後の方、妊娠の可能性がある方は、検査前に担当医師にご相談ください。
骨塩定量(骨密度)検査
骨塩定量検査は施設により様々な部位(前腕や踵など)で実施されていますが、日本骨代謝学会および日本骨粗鬆症学会では「骨粗鬆症診断にはDXA(Dual-energy X-Ray absorptiometry二重エネルギーX線吸収法)を用いて、腰椎と大腿骨近位部の両方測定するのが望ましい。」とされており、当院ではこれに準拠して検査を実施しています。
当院ではDXA法を利用した全身用骨密度装置を導入しており、標準的な検査部位として腰椎骨と大腿骨近位部の骨密度を計測して、各診療科へ提供しています。
- 【検査に関する注意】
- ・妊娠中または妊娠の可能性がある方は検査できません。
- ・バリウムを使用した消化管検査を1週間以内に受けた方は、バリウムの残存により検査できない場合があります。
透視/断層検査
X線透視検査とは、X線透過画像をモニターで確認しながら行う検査全般を言います。例えば、消化管造影(胃透視や注腸)検査や特殊手技(PTCDやPTEGなど)検査、各種整復術(脱臼や骨折など)などがあり、これらの検査以外にも腎尿路系や生殖器系の造影検査などもX線透視装置を使用して施行しています。
当院には気管支鏡室に1台、内視鏡室に2台、透視撮影室に2台のX線透視装置が稼働しており、2台の装置では、トモシンセシス(デジタル断層撮影)機能が可能となっており、1回の撮影(数秒程度)をするだけで自由に裁断面位置や裁断厚を再構成することができます。
また、透視撮影室の1部屋にX線撮影装置を設置することで、一般撮影検査にも対応しています。
CT検査
- 身体を中心に全周方向(360°)からX線を照射し、透過したX線を検出器でデータとして収集、処理することにより身体の断面を画像化する検査です。
- CT検査は数ミリ程度の病変を見つけることができるため、様々な疾患に対し検査が行われます。ヨード造影剤を使用することで臓器に濃淡をつけ、より精密な検査もおこなっています。
- 当院ではMDCT(Multidetector CT)を導入しており、診断専用CT装置を6台(64列4台、256列1台、320列1台)設置しています。MDCTにより撮影時間は数秒から10秒程度と比較的短時間に広範囲の撮影ができます。また、これらの装置には先進的な被ばく低減技術も取り入れられています。
- 検査内容によっては収集したデータを断面として表示するだけではなく、臓器や病変の位置を立体的に表示する三次元画像などの画像表示も可能です。
- 撮影した画像は放射線科専門医によって読影され、質の高い診断情報を各診療科に提供しています。
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- 【検査に関する注意】
- ・身体に医療機器(ペースメーカーやICDなど)を装着している場合は注意が必要となりますので、予約時や検査前にお申し出ください。また、検査予約時にお渡しする予約票の注意事項を必ずお読みください。
MRI検査
- 身体を強い磁場環境下に置いた状態で高周波を当てることにより、体内から出る信号を受信し、多方向の断面画像や多種類の断面画像を得る検査です。また、X線による被ばくもありません。
- 当院では超高磁場(3T)装置2台、高磁場(1.5T)装置3台が稼動しています。検査部位は頭部から足先に至る全ての部位を対象としており、頭部の検査では梗塞や腫瘍などの様々な脳疾患の検索が20分程度の検査時間で行え、他部位の疾患についても40分程度の検査時間で行っています。また、全ての検査結果を放射線科専門医が読影し、質の高い診断情報を各診療科に提供しています。
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- 【検査に関する注意】
- ・強力な磁場を使用しているため体内外の装着物(ペースメーカーやICDなど)によっては検査禁忌の方もいます。安全にMRI検査を受けていただくためにも、検査予約時にお渡しする予約票の注意事項を必ずお読みください。
血管撮影検査
動脈や静脈に細い管(カテーテル)を挿入し、目的部位に造影剤を流しながら撮影を行い、診断する検査です。
また、施行手技や使用機材の進歩により診断に加えて画像下治療(IVR)が日々実施されています。IVRには、血管内を治療する血管系IVR以外に生検やドレナージ術などの非血管系IVRがあり、目的に応じて様々な画像診断機器を選択、または組み合わせて治療を行います。
当院では多目的血管撮影(バイプレーン)装置が2台、CTを備えたAngio-CT装置が2台、ハイブリッド手術室対応多軸透視・撮影装置が1台、計5台が稼働し検査、IVRを行っています。血管撮影だけではなく、各々の装置の特徴を活用した3次元回転アンギオ撮影(3D-DSA)、アンギオCT撮影、CT透視機能などを駆使して、より安全で精度の高い診断およびIVR支援を行っています。
また、専任の医師と看護師、臨床工学技士、診療放射線技師が連携してチーム医療を行っています。
核医学検査
- 核医学検査は放射性同位元素(RI)を含んだ放射性医薬品を体内に投与し、機能や代謝により分布されたRIから出る微量の放射線(γ線)を検出器(ガンマカメラ)で収集することにより骨疾患、腫瘍・炎症疾患の検索、脳や心臓のなどの血流を観察したり、各臓器の機能評価を行うことできる検査です。
- 当院では従来型のガンマカメラ2台とCTを装備したガンマカメラ(SPECT/CT)1台、心臓専用の半導体検出器搭載のカメラ1台が稼働しています。
- 核医学検査専任の医師と専任の技師とで質の高い技術のもと、チーム医療を行っています。
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- 【検査に関する注意】
- ・核医学検査は放射性医薬品を体内に投与してから撮影するまでの時間が、数秒から数日と検査目的により大きく異なります。検査予約時にお渡しする予約票で日時を必ずご確認ください。
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放射線治療
放射線療法には、体外から放射線を照射する外部照射と放射線を放出する小線源を体内に入れて照射する小線源治療があります。
当院では身体の外部からX線や電子線を照射する直線加速器型高エネルギー放射線治療装置(LINAC)を2台保有しており、その内1台は高精度放射線治療(強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療(SRT)、画像誘導放射線治療(IGRT))を主として行っています。
また、身体の内部からの放射線治療として子宮頸癌などに対する密封小線源を装備した遠隔操作型放射線治療装置(RALS)や前立腺癌に対するヨウ素125シード線源永久刺入法を、放射線治療専門医を中心に認定看護師、専門技師が協力して日々の治療を実施しています。