AYA世代(思春期・若年成人)のがんについて
AYA世代に発症するがん
AYA(あや)世代とは、Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、定義は国によりさまざまですが、15歳から39歳が相当します。特に29歳までの年代のがんは、発生数も少なく成人がんと異なる多種多様ながんが認められます(図)。これらのがんは専門とする医療機関が少なく、診断や治療に専門的知識が必要とされています。さらにAYA世代では成長発達段階や若年成人に特有の心理的社会的問題を生じており以下の特徴があげられます。
- AYA世代は近年がん治療において重点的に取り組むべき課題を有する世代として注目されている。
- 治療成績の改善が十分でない。
- がん対策に対して取り残された世代であった。
- 教育・就職や心理・社会的な側面など特別な配慮が必要である。
厚生労働省では、平成30年に小児がんの治療に加えてAYA世代も含めたがん治療・環境整備の充実を目指す計画を立てています。
国立研究開発法人国立がん研究センター
「がん情報サービス」より
【URL】 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/child_aya.html#a4
若年成人(Young Adult)の診療
おおむね20歳から39歳までの患者さんの場合、就労、恋愛、結婚、出産などのライフイベントに応じて、一人一人に応じたサポートを行うことが大切です。
突然のがんなどの罹患などにより、通学や就労が難しくなるため、精神的、身体的、経済的困難を抱えている患者さんも少なくありません 。
治療と就学・就労の両立、がん治療と妊娠・出産、お子さんやご家族との関係など、患者さんのライフステージに応じた支援が求められます。
就労支援
AYA世代は、就職を控えた学生さんや社会人として担う方々が含まれ、がんなどの罹患が就職・就労に影響し、不安を感じる患者さんが少なくありません。
患者支援センター(がん相談支援センター)では、看護師や医療ソーシャルワーカー、また外部の東京都社会保険労務士会所属の社会保険労務士、ハローワーク飯田橋に配置されている「就職支援ナビゲーター」と連携し、治療と仕事の両立に向けて相談を実施いたします。
がん治療と妊娠・出産
生殖機能(妊孕性)に影響を及ぼすものがあり、将来子供を授かることが難しくなる可能性があります。妊娠や出産を希望される患者さんにとっては心配される問題の一つとなります。また、女性および男性としての役割を失う恐怖、将来の結婚や恋愛関係における不安、そして妊娠や出産だけでなく人生そのものを設計する上での困難を感じて苦しむ患者さんも少なくありません。
当院では、がん患者さんの妊娠・出産や治療による生殖機能への影響などの相談をお受けしています。また、当院で治療を受けられる患者さんの妊孕性温存に関するご相談をお受けしています。
思春期(Adolescent)の診療
おおむね15歳から19歳の患者さんの場合 、小児がんとして扱っている病気は主に小児科が治療し、血液内科、整形外科・リウマチ外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科・頭頚部外科、女性診療科・産科・内分泌外科など専門領域での診療科主体となる疾患では、各科の医師と相談しながら治療協力する体制を整備しております。
当院の小児がん診療体制
当院では、小児がん連携病院として地域の小児がん拠点病院と連携を取りながら標準治療に基づいた小児がんの診断、治療そして治療終了後も長期にわたりフォローアップを行っています。固形腫瘍の診断においては、付属施設としてPETセンターがあり、的確な診断が可能です。治療は造血器腫瘍においては日本小児がん研究グループ(JCCG)の治療プロトコール、固形腫瘍においてはJNBSG、JWiTSなどの各治療プロトコールに則った標準的治療を行っています。
また、診療に当たっては、血液腫瘍グループの医師だけでなく小児の循環器、神経,内分泌などを専門とする医師が必要に応じて診察、検査を行う体制をとっています。さらに心理士も常駐しており、入院中は病棟で、外来診療時は外来での対応が可能になるよう整備しています。治療終了後は長期フォローアップ外来を設置し、成人になった小児がん経験者に対してもきめ細かいフォローアップを行っています。
教育支援・復学支援
長期入院する患児にたいしては当院内での訪問学級を整備しています。退院前には、復学支援会議を主治医も参加した形で行いスムーズな復学を支援しています。また臨床心理士による心理的サポートも積極的に取り入れています。