感染制御室
~感染対策を通じた医療安全・診療の質向上への取り組み
感染制御室は、感染症や感染対策の専門的な知識をもった看護師・薬剤師・微生物検査技師・事務職・医師などの多職種で構成された2つのチーム(感染制御チーム(ICT:Infection Control Team)と抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST))が連動し、病院の中で問題となる病原体を「作らない」「広げない」活動を推進しています
感染制御室は、感染対策部門として、良質な医療・ケアの提供と、患者さんや家族、従業員など病院に関わる全ての人々を感染症から守るため、病院内の様々な部署と連携して、医療関連感染対策を行っています。また、全従業員に対し、感染対策教育・啓発活動を行っています。また、感染対策を通じた医療の安全・医療の質向上、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals;SDGs)活動にも取り組んでいます
感染対策部門の体制
日本医科大学付属病院では、感染対策部門を「医療安全管理部」内に設置、院長直属のもと、病院感染対策委員や各部署に配置した感染管理マネージャー、看護部感染管理部会 リンクナースと連携し業務を行っています
感染対策部門は、ICD制度協議会認定 インフェクションコントロールドクター、日本看護協会認定 感染管理認定看護師、ICMT制度協議会認定 感染制御認定臨床微生物検査技師、日本病院薬剤師会認定 感染制御認定薬剤師、事務職などで構成された、感染制御チーム(ICT:Infection Control Team)と抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)を中心に活動しています。また、看護部感染管理部会や、診療科および部署に配置した感染管理マネージャーと、ICTやASTが協働して各現場における感染対策を行っています
*日本医科大学付属病院 医療関連感染(院内感染)防止対策指針 (PDF:827KB)
主な取り組み
- 院内感染防止対策の策定・実施、監視及び指導などの活動(病院感染対策委員会・感染管理マネージャー会議、感染制御室会議、ICT・ASTミーティングやラウンドの実施)
- 各部署における感染対策の策定および実践推進のための教育・支援活動(ICT・ASTミーティングやラウンドの実施、多職種ミーティングの開催)
- 感染防止マニュアルの作成・改訂、運用
- 耐性菌や医療関連感染に関するサーベイランスの実施(JANIS*、J-SIPHE**、私立医科大学感染対策協議会サーベイランス事業に参画)
*厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)、
**厚生労働省委託事業AMR臨床リファレンスセンター 感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)
- 抗菌薬適正使用など薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)対策活動
- 感染症発生時の迅速かつ組織的対応(感染拡大防止策の実施・接触者対応・関係部門への連絡、調整など)
- 従業員の職業感染防止策の策定および発生時の対応(血液体液曝露後、職域ワクチン接種、結核発生時の対応、など)
- 感染対策上必要な指導、教育、広報の実施および感染対策に関わる相談への対応(感染対策研修講演会、感染症レクチャーの開催、せんだぎるーるぶっく~医療安全の手引き作成、ICT/ASTニュース配信、など)
- 第三者評価による、感染対策活動の評価と改善への対応(私立医科大学病院感染対策協議会、感染対策向上加算1に係る相互ラウンド、など)
- その他、院内感染防止に関すること。
1.感染対策に関わる多職種ミーティングの開催
- 感染対策に関わる情報の共有、課題の抽出や解決に向けた検討などを行うミーティング(感染制御室会議、ICT・ASTミーティング、など)を定期的に開催しています
2.病院感染対策委員会・感染管理マネージャー会議の開催
- 病院全体に係る感染症、薬剤耐性菌、抗菌薬適正使用、手指衛生についての情報や課題の共有、感染防止策の実施・評価を行う会議を毎月開催しています
3.従業者研修の開催
- 全従業員に向けた院内感染対策に関する研修・講演会の開催や、研修医・専攻医を対象とした感染症レクチャーを実施しています
- 感染対策部門所属看護師が現場に出向き、感染対策の実地教育活動(出張感染対策レクチャー)や新入職員、中途採用者、および復帰者向け実地感染対策教育を行っています
4.ラウンドの実施
ICTラウンド
- 医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務等の多職種で構成される感染制御チーム(ICT)が、感染対策に関わる環境や取り組みについて、定期的に現場での情報収集および実践・評価・指導、周知、啓発を行っています
- 感染対策部門所属看護師が現場に出向き、感染対策の実地教育活動(出張感染対策レクチャー)や新入職員、中途採用者、および復帰者向け実地感染対策教育を行っています
ASTラウンド
- 感染制御認定薬剤師や抗菌化学療法認定薬剤師を中心に、医師、看護師、薬剤師、検査技師などの多職種で構成される抗菌薬適正使用支援チーム(AST)が、血液培養陽性者や入院・外来患者の抗菌薬使用状況のモニタリングなどを通じ、抗菌薬適正使用推進への活動を行っています
- グラム染色から考える感染臓器と頻度の高い起炎菌表、アンチバイオグラムなどのマニュアルを作成、医師・薬剤師に配布し、現場での抗菌薬選択に役立てています
耐性菌情報の把握と現場ラウンド
- 病院内の医療関連感染を把握するためサーベイランスを実施、微生物検査部門や、感染制御認定臨床微生物検査技師とのタイムリーな情報共有の上、薬剤耐性菌発生時に現場ラウンドを行い、評価とフィードバック、改善に向けた対策方法の立案、実地教育や研修会を行っています
他医療機関との相互ラウンド
- 私立医科大学病院感染対策協議会に参画し、全国の他私立医科大学病院との相互ラウンドや、感染管理加算1.2取得施設との相互ラウンドを実施しています
- 第三者からの評価を受け、当院の感染対策のさらなる向上を目指しています
5.地域や他医療機関との連携
- 地域の感染症流行状況の把握や地域医療への貢献を目的に、地域医師会、連携病院、保健所と感染対策に関するカンファレンスを定期的に開催しています
- 連携医療機関との感染対策に係る実地訓練や、各連携施設を直接訪問し、感染対策に関するアドバイスを行っています
- 学校法人日本医科大学に付属する4病院全体の感染対策の向上のため、法人内3病院(武蔵小杉病院、多摩永山病院、千葉北総病院)と協働し、感染対策への取組みを行っています
- 私立医科大学病院感染対策協議会、私立医科大学病院感染対策推進会議に参画し、全国の医療機関との情報交換を積極的に行っています
6.職業感染対策
- 衛生委員会・事務部庶務課と協働し、新規入職者を対象として流行性ウイルス性疾患の抗体検査および抗体の基準値を満たさない者に対してワクチン接種を実施しています
- 流行期前に全職員・委託業者を対象として季節性インフルエンザワクチンの接種を行っています
- 当院で実習を行う学生や留学生等への流行性ウイルス性疾患の抗体検査およびワクチン接種の確認を行っています
7.その他、院内感染防止の取組み
- 看護部感染管理部会と協働し、手指衛生の効果と重要性の周知を目的に、毎年、手指衛生遵守率調査等の手洗いキャンペーンを行っています
- 患者さん・家族など来院者を対象とした手指衛生、咳エチケット等に関する掲示物、パンフレット、その他使用可能なツールを作成、新型コロナウイルス感染症など各種感染症に関わる感染防止対策を啓発活動に取り組んでいます
- 衛生委員会と協働し、職業感染防止策、ファシリティマネジメントなどの取り組みを行っています
- 看護部スキルアップコース(看護部教育支援室、感染管理部会との協働)開催や、日本医科大学 医学部学生を対象とした感染対策教育・研修を行っています
暮らしの中の感染対策~手洗いと咳エチケット
私たち人間は、多くの細菌やウイルスなどの微生物と共生しています。細菌やウイルスなどの「病原体」が体内に入り込んで悪さをする病気のことを感染症といいます。
病原体は目に見えません。そのため、「汗を除くすべての体液(血液・唾液・分泌物(たんなど)・おう吐物・排泄物(尿・便)・傷のある皮膚・粘膜など)は感染源となり、感染する危険性があるものとして取り扱う」という考えのもと、病原体を広げないための対策“標準予防策”を行います。たとえば、病原体に触れた手で色々な場所にそのまま触れると、その場所が汚染され、病原体が広がる原因になります。
さまざまな感染症を運んでいる「手指」を衛生的に保つことはとても大切です。咳やくしゃみがあるときには、マスクなどを用いて鼻や口を覆い、周囲に飛び散るのを防ぎましょう(咳エチケット)。
手洗いや咳エチケットは、病院の中だけでなく、毎日の暮らしの中で行える大事な感染対策です。
咳、鼻水、くしゃみ、発熱の症状がある方は、マスク着用のご協力をお願いいたします。また、咳やくしゃみをするときは、ハンカチやティッシュなどで口と鼻を覆いましょう
患者さん、ご面会の方、従業員を感染症から守るため、手指衛生(手洗い)の励行をお願いしています。
<<手指衛生(手洗い)のポイント>>
• 手洗いは30秒かけて洗いましょう
• 親指、指先、指の間の洗い残しに気を付けましょう
• せっけんは流水で十分にすすぎましょう
• 手荒れを予防するために、手指は十分に乾燥させ、ハンドクリームを使用しましょう
当院では、流水による手洗いとともに、擦式アルコール消毒薬による手洗いを推奨しています。