診療内容
白内障
白内障は、目の中のレンズの役割を果たしている水晶体が濁る病気です。日常生活に支障が出る程度に白内障が進行すれば、手術による治療を行うのが一般的です。 手術する時期は人によって違いますので、担当医と御相談下さい。白内障手術は、手術方法や機器の進歩により、安全かつ正確に行うことができるようになってきており、当院でも最新の機器を用いて手術を行っています。 現在当院での白内障手術は、日帰りまたは2泊3日の入院で手術を行っており、90%以上を日帰り手術で行っております。
多焦点眼内レンズ
また、当科では多焦点眼内レンズも扱っております。扱っている多焦点眼内レンズは、2焦点・3焦点・焦点拡張型など国内で認可を受けているレンズです。患者様のライフスタイルを考え最適な眼内レンズをしていきます。また高次収差(不正乱視)のある方は、多焦点眼内レンズの能力が生かせず、逆に見えにくさが生じます。
当院では、前眼部OCTであるCASIA2を導入し高次収差について検討し、多焦点眼内レンズの適応を術前に丁寧に判断し、治療を進めております。ご希望の方がいらっしゃいましたら、お声がけ下さい。
角膜・ドライアイ・アレルギー外来
円錐角膜、感染性角膜炎、水泡性角膜症、角膜外傷、翼状片、ドライアイ、結膜弛緩症、アレルギー性疾患を専門に診療を行っています。
円錐角膜は思春期ころより角膜中央部が薄くなり突出してくる原因不明の病気です。近視や乱視が強くなり、眼鏡では視力が出なくなります。中等度までの円錐角膜ではハードコンタクトレンズを装用することで視力を改善することができます。特殊なハードコンタクトレンズの作成に対応しています。
感染性角膜炎は、細菌、真菌、ウイルス、アカントアメーバなどが原因で起きる疾患です。初期症状は眼充血と眼痛のみですが、進行すると角膜表面の上皮欠損をともなう炎症を生じ、潰瘍になります。角膜潰瘍の状態になると、急激な視力低下と自制困難な眼痛を生じることがあります。
ドライアイは涙や目の表面の角結膜上皮さらに瞬きが関わる慢性疾患です。ドライアイの診断、治療のために病院の眼科外来を受診される方には、目の乾燥などの眼不快感に加え、なんとなく見づらい、目が疲れるといった他人にはわかってもらえないような様々な不定愁訴が認められます。治療では、各種点眼治療に加え、涙点プラグ、涙点閉鎖、結膜弛緩症手術、自己血清点眼の作成(現在準備中)、ムスカリンアゴニスト内服治療を行っています。また、重症ドライアイ例の急性例では、瞼球癒着防止のために眼科医が丁寧で入念な対処を心がけて治療にあたっています。
アレルギー外来の対象疾患はアレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、春季カタル(角膜潰瘍を含む)、コンタクトレンズによる巨大乳頭結膜炎、アトピー性白内障となります。
治療法としては、(l) 抗アレルギー薬 ①点眼薬(メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1受容体拮抗薬)アレルギー性結膜炎の基本的な治療となります。②内服薬 抗アレルギー点眼薬で不十分な場合、アレルギー性鼻炎を併発している場合など内服薬の処方を行います。現在、ほとんど眠気の感じない内服薬も処方可能となってきました。
(ll) ステロイド薬 ①点眼薬 抗アレルギー点眼薬で不十分な場合、炎症の重症度に応じた力価のステロイド点眼薬を併用します。眼圧上昇、感染症リスク、白内障の問題があるため、定期的に通院の必要があります。②内服薬 小児や角膜上皮欠損の症例に用います。全身への副作用を考え、内科、小児科の専門医と連携して治療を行います。③ステロイド懸濁液の瞼結膜下注射 免疫抑制剤の登場によりかなり使用頻度が減りましたが、重症例に対して、トリアムシノロンアセトニドまたはベタメタゾンを上眼瞼の結膜下に注射します。
(lll) 免疫抑制薬 春季カタルに対して、2種類の免疫抑制点眼薬が認可されている。免疫抑制点眼薬によりステロイドの使用を漸減または中止も可能な場合があります。
(lV) 外科的治療 ①結膜乳頭切除 薬物治療で症状が軽快せず、角膜上皮障害が悪化する場合行う。 ②角膜プラーク切除 を行います。担当医は社団法人日本アレルギー学会認定アレルギー専門医・指導医です。
なお、当院では角膜移植は行っておりません。必要な場合、他院への紹介となります。
網膜硝子体外来
当院では上記疾患に対する硝子体手術を行っています。硝子体手術は硝子体を吸引切除し、様々な網膜硝子体疾患によって引き起こされる増殖組織、出血を除去し、可能な限り網膜の機能を改善する手術です。網膜剥離、増殖糖尿病網膜症、黄斑浮腫、黄斑前膜、黄斑円孔などに対して最新の知識に基づき、外科的・内科的治療を行っています。手術は、より侵襲の少ない小切開硝子体手術システムや広角眼底観察システムを用いて安全かつ確実な手術を目指して行っております。
黄斑外来
対象疾患は加齢黄斑変性症、近視に伴う黄斑変性、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜前膜、黄斑円孔、強度近視、病的近視、近視性脈絡膜新生血管、特発性脈絡膜新生血管、網膜色素線条、AZOOR complex症候群、黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)、ピット黄斑症候群、pachychoroid pigment epitheliopathyなど。
加齢黄斑変性症は50歳以上に年齢とともに起こってくる疾患です。欧米では成人の失明率の第一位となっており、近年、日本でも患者数が増加してきています。網膜の黄斑部という視力に一番大切な部位に病気が起こります。加齢黄斑変性症には萎縮型、滲出型の2つの病型があります。萎縮型は網膜が萎縮していくタイプです。滲出型は網膜の下にある脈絡膜から新生血管が発生し、そこから出血を起こしたり、血液中の血漿成分がもれだしたりして網膜に浮腫を起こしたり、網膜剥離を起こしたりします。症状は中心部のゆがみ(変視症)から始まり、進行すると中心にある病気の部分の視野が欠けてしまい(中心暗点)、視力が極端に低下します。
加齢黄斑変性症の治療には、1.抗VEGF抗体 2. 光線力学療法(PDT) 3.直接光凝固術 4.経瞳孔温熱療法 5.手術療法 などの治療法があります。
当科では抗VEGF抗体の投与を第一選択とします。まず初めに導入時に3回固定打ちを行います。その後、Treat And Extend (TAE)法といって、来院および投与間隔を2週間延長し治療を行い、滲出が再燃すれば、投与間隔を2週間短縮し治療を行うという方法です。日本医大黄斑外来では、TAE法を最大16週まで延長し、再燃なく16週間隔を連続3回達成できれば、経過観察に移行するようにしています。
Pachychoroidとは脈絡膜肥厚をはじめとする複数の臨床的特徴を含む概念のことであり、近年注目を浴びている分野です。従来の滲出型加齢黄斑変性とは異なり、ドルーゼンを認めず、網膜色素上皮下に脈絡膜血管新生を有するものです。今後、OCTの画像所見を踏まえて治療方針を決めていく時代が来たと考えております。例えば、病的に肥厚した脈絡膜やpachychoroidの所見の場合では、アフリベルセプト、薄い脈絡膜やpachychoroidの所見のない場合ではラニビズマブといった脈絡膜に注目した個別化治療が今後の戦略として用いられていくと考えられます。
緑内障診療
緑内障は、視神経に障害が起こり視野(見える範囲)や視力に障害を起こす病気です。眼圧の高いことが原因のひとつと考えられていますが、正常眼圧緑内障といって、眼圧が正常でもその人の視神経が圧力に弱いと引き起こされることがあります。緑内障は40歳以上の日本人の20人に1人がかかっているとされ、日本人の失明原因の第1位です。緑内障の中でも日本人の約7割は眼圧が正常である正常眼圧緑内障と言われています。
緑内障の治療
1. 点眼による治療
眼圧を下げる効果のある目薬を点眼します。具体的には、房水の産生を抑える効果がある薬や、房水の流出を促す効果がある薬を点眼して、眼圧を低下させます。もともと眼圧が高くない人でも、眼圧を下げることによって、病気の進行を抑えることができます。点眼薬は、最初は1種類を使用していくことが多いですが、眼圧の下がり具合が悪い場合は複数の点眼薬を使用します。また、眼圧の管理は一生涯していかなければならなく、点眼薬を途中で中断すると、視力や視野の状態が悪化していきます。決められた点眼回数や種類を毎日しっかり守ることが大切です。
2. 選択的レーザー線維柱帯形成術 (SLT)
点眼だけでは不十分な症例に対して点眼薬治療と併せて行います。マイクロパルスレーザーを線維柱帯に照射し、線維柱帯細胞を活性化させ、房水の流れを良くして眼圧の低下をはかる治療法です。有効率は70%の程度で、眼圧下降率は20~30%となっています。一度の照射で効果は長期に持続し最も強力な点眼薬一剤に匹敵する眼圧下降効果が認められています。特に高齢者でアドヒアランスの悪い患者様には、非常に有用な治療法と考えられます。
3. 線維柱帯切開術 (フックロトミー)
近年、緑内障分野では、低侵襲であるMIGS(minimally invasive glaucoma surgery)が推奨されています。この手術もその中の一つとなります。目詰まりしている線維柱帯を切り開き、本来の流出路であるシュレム管に房水を流す手術です。一過性の出血のため、数日間視力低下を来します。
4. 水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術(iStent)
この手術もMIGSの一つとなります。水晶体再建術(白内障手術)と同時に行う緑内障手術治療で、眼内ドレーン(iStent)と呼ばれるチタン製の器具を線維柱帯に埋め込み、眼圧を下げます。眼内ドレーン挿入時の眼内出血は必ず生じますが、線維柱帯切開術に比べ出血量は少なく、ほとんどの症例で手術翌日には出血が吸収されます。
5. 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
現在、原発開放隅角緑内障をはじめ大部分の緑内障に対して、最も有効な手術となります。線維柱帯を部分切除し、前房水の出口を別に作る手術です。まず結膜と強膜を切開し、線維柱帯を一部、切除します。切除した線維柱帯部分に虹彩が癒着しないように、虹彩も一部切除します。手術後、前房水は線維柱帯の切除された部位を通り、結膜の血管から吸収されます。結膜の下に房水が貯まるようになり、この膨らみを濾過胞といいます。この手術は、術後のメンテナンスが重要となります。
このように、緑内障治療として、様々な選択肢が出てきました。当院では、患者様一人一人に最善の治療法を提供していきたいと考えております。
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日本医科大学千葉北総病院
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