集中治療室

私たちは、日本ではまだ数少ない集中治療室(ICU)専従の集中治療専門医を中心に、診療科にとらわれず、すべての重症患者の頭からつま先までの全身をくまなく管理し、危機的状況にある患者さんの命を守っています。また患者さんの主科、感染症科、看護師、臨床工学技士、リハビリテーション科、など、他職種との連携も積極的に行い、より高度な医療を提供し一人でも多くの患者さんを救命できるように日夜努力しています。
私たちのICUには、主に手術に関連した患者さんが入室しますが、院内救急患者も収容しています。また、院内のみならず、他施設からの紹介も積極的に受け入れ、重症患者の救命に貢献しています。

主な疾患

成人・小児心臓血管外科術後、成人肺がん術後、成人脳外科術後、成人食道外科術後、敗血症性ショック、重症呼吸不全(ARDS)、他

診療体制

  • 集中治療専門医がICUに専従し、セミクローズドの体制です。
  • ICUベッド20床(陰圧個室3、個室9)、HCU 16床。特定集中治療管理料加算1を取得しています。
  • 一日に原則3回、患者カンファレンスを行い、必要であれば主担当科も交えて治療方針の徹底、治療効果の評価、治療方針の決定などの討論を行っています。
  • 毎週水曜日に、勉強会、ジャーナルクラブを行い、毎週金曜日に、看護師、臨床工学技士および医師の合同で、ECMOハンズオントレーニングを行っています。
  • 麻酔科後期研修医がローテーションで研修しています。
  • ECMO治療の研修生を受け入れています。期間は、希望に応じて相談します。

レジデント、シニアレジデント、集中治療専門医を目指す医師が研修を希望された場合は、医学教育のスペシャリストが独自の教育プログラムでニーズにあわせ指導します。
ECMO(Extra-Corporeal Membrane Oxygenation)スペシャルユニット
ECMOは、簡易型の高性能な人工心肺装置を用いて、通常の方法では治療困難な重症呼吸・循環不全に対して、中長期間、通常数日から週の単位で持続的な呼吸・循環補助を行う治療法です(写真)。重症呼吸・循環不全に対するECMOのコンセプトは、障害を受けて機能していない心・肺を休ませ、その間に基礎疾患を治療し、回復させるための時間稼ぎをし、かつ、肺傷害に対しては人工呼吸関連肺傷害(VILI)を最小限にすることで、その間に原疾患の治療を行う時間稼ぎをします。ECMOは複雑な技術であり、適切な機器や設備、そしてECMO治療に習熟した専門チームがいて、緊急時のバックアップ体制を有する施設で行うべきです。適応基準は、以下のように考えられています。

適応基準

  1. 患低酸素性呼吸不全では、原因にかかわらず、予測死亡率50%以上でECMO導入を考慮し、80%以上ではその時点で適応と考えます(ELSOガイドライン改変)。
     a. FIO2 >90%にて、PaO2 / FIO2 <150であれば、予測死亡率は50%。
     b. FIO2 >90%にて、PaO2 / FIO2 <80であれば、予測死亡率は80%。
    (例:高い圧のPEEP[典型的には15~20 cmH2O]で、少なくとも6時間呼吸管理しても、PaO2 / FIO2 <80であり、潜在的に可逆性である重症呼吸不全)
  2. 気管支喘息重積やpermissive hypercapniaによる高二酸化炭素血症で、PaCO2 >80mmHgあるいは肺保護に基づく安全な吸気圧(Pplat≦30cmH2O)を達成できない場合。
  3. 重度のair leak syndrome
  4. 肺移植に登録している患者さんの呼吸状態が悪化し気管挿管が必要になった状態。

elso

ECMOセンター
最重症の呼吸不全や循環不全に対し行われるECMO治療に関しては世界標準の治療を提供しています。ECMO治療は非常に複雑で、治療に当たるスタッフには高度な技術と経験が要求されます。日本医科大学では、新病院スタートと同時にECMO専用ユニットを外科系集中治療室に設置しました。ECMOに必要な機器を整備し、スタッフの絶え間ないトレーニングを積んでおり、ECMOの国際的学術コンソーシアムであるExtracorporeal Life Support Organization (ELSO)による正式な評価で、2016年9月、シルバー・レベルに認定されました。