当院における抗アミロイドβ抗体薬レカネマブ「レケンビ®」およびドナネマブ「ケサンラ®」治療
アミロイドβに対する抗体という新しいメカニズムを持った、アルツハイマー病治療新薬であるレカネマブ(販売名:レケンビ®)およびドナネマブ(販売名;ケサンラ®)が使用可能となっています。当院でも最適使用推進ガイドラインを満たした患者さんに対して、いずれかの薬剤の点滴静注を行っております。
本薬剤の使用は、厚生労働省が定めた最適使用推進ガイドラインに準拠することが求められておりますが、当院ではまず、従来からの「もの忘れ外来」および「脳神経内科新患外来」を窓口として受診していただきます。
なお、かかりつけ医からの紹介状をお持ちの方を優先して、レケンビおよびケサンラ治療の適否について判断させていただいておりますので、ぜひかかりつけ医の先生にご相談の上、当院を受診していただければと思います。
1. スクリーニング
まず、病歴確認およびスクリーニングとしての神経心理検査MMSEをお受けいただき、予約検査として頭部MRI(必要に応じて脳血流検査などを追加します)と、さらに詳しい神経心理検査(MoCA-J、CDRなど)を受けていただき、ここまでの検査の範囲で厚生労働省が定めた最適使用推進ガイドラインで求められている条件(レケンビ*、ケサンラ**)をクリアしているかどうかを確認します。
(*)MMSE: 22点以上、頭部MRIでは、最適使用推進ガイドラインに記載されている以下の事項がいずれも認められないことを確認します。(1) 5 カ所以上の脳微小出血(最大径 10 mm 以下)、(2) 最大径 10 mm 超の脳出血、(3) 脳表ヘモジデリン沈着症、(4) 血管原性脳浮腫、(5) 脳挫傷、脳軟化、動脈瘤、血管奇形又は感染病巣、(6) 多発性ラクナ梗塞、大血管支配領域の脳卒中、重度の小血管疾患又は白質疾患、(7) 占拠性病変又は脳腫瘍 |
(**)MMSE: 20点以上28点以下、頭部MRIでは、最適使用推進ガイドラインに記載されている以下の事項がいずれも認められないことを確認します。(1) アミロイド関連画像異常-浮腫/浸出液貯留、(2) 5 カ所以上の脳微小出血、 (3) 2ヵ所以上の脳表ヘモジデリン沈着、(4) 脳出血、(5) 重度の白質疾患 |
2. アミロイドβ蓄積の確認
投与できる可能性がある患者さんに関しては、続いて脳内にアミロイドβが蓄積しているかどうかを確かめる検査を受けていただきます。これには、2種類の検査(アミロイドPETと脳脊髄液検査(CSF))があり、現在(2025年4月1日現在)当院では前者のアミロイドPET検査を中心に行っております。しかし、必要に応じて、後者のCSF検査を追加実施しており、その場合は一泊入院で脳脊髄液アミロイドβ42/β40、リン酸化タウなどを測定しています。
アミロイドPET検査はレカネマブ(レケンビ®)およびドナネマブ(ケサンラ®)投与の適応確認の方のみが対象です。治療担当施設(専門医)もしくは当院脳神経内科・メンタルヘルス科外来からの予約でお受けいただけます。外部からのご予約は当院医療連携支援センターで承っております。
3. レカネマブ(レケンビ®)およびドナネマブ(ケサンラ®)投与開始
専門医が全ての検査を総合的に検討し、レカネマブ(レケンビ®)およびドナネマブ(販売名;ケサンラ®)の投与の対象(アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症)に該当するか否かを判断します。
投与対象となった場合、レカネマブ(レケンビ®)の場合、初回投与は1泊入院で、2回目以降は外来で投与を行います。ドナネマブ(ケサンラ®)の場合は、初回から3回目まで1泊入院で、4回目から外来で投与を行います。
なお、入院していただくのは、点滴実施時の発熱や関節の痛みといったアレルギー反応が出ることが一部の方に報告されているためで、その場合は必要に応じて投薬するなどの対応をいたします。
4. レカネマブ(レケンビ®)およびドナネマブ(ケサンラ®)の定期投与
以後、レカネマブ(レケンビ®)は2週間に一度、ドナネマブ(ケサンラ®)は4週間に一度、来院していただき、静脈点滴で薬剤を投与します。点滴にかかる時間(調整などの時間は除きます)は、前者では1時間、後者では30分程度です。
また、投与開始から半年程度は脳の腫れや脳の出血などの副反応を生じる可能性があるため、定期的な脳MRI検査が必要です。なお、投与期間は原則18ヶ月(1年半)ですが、ケサンラは12ヶ月(1年)後にアミロイドPETを再検し、アミロイドが一定水準以下まで減少した場合には、12ヶ月(1年)で投与が終了する場合があります。
ご不明な点は、当院認知症疾患医療センター(直通電話 0476-99-0413)までお問い合わせください。
(2025年4月1日現在)