4 2035年には、ゲノム情報の活用が進み、個々の患者に合わせた精密医療が一般化するでしょう。医師は患者の遺伝情報を解析し、疾患のリスク評価や予防策、最適な治療法を提案する能力が求められるようになります。 また、医工融合により、生体応答や疾患状態のシミュレーション技術が進歩し、多階層データ(分子、細胞、組織、臓器、個体レベルのデータ)に基づいて疾患の進行や治療効果を予測することが可能となります。さらに、ナノテクノロジーを基盤としたドラッグデリバリーシステムが普及し、治療薬を正確に患部に届けることで、副作用を抑えつつ効果的な治療が実現されるでしょう。 2035年の医師は、これらの技術を駆使して高度で個別化された医療を提供するプロフェッショナルとしての役割が期待されます。 医療分野におけるテクノロジーの進歩は急速に進んでいます。外科領域で普及がすすむロボット手術は詳細な視野や精密な操作により、正確な手術を可能にしました。また、近年注目度の高い人工知能(AI)は膨大な医療データを解析し、新たな知見や治療の最適化を目指した取り組みが進んでいます。 次世代医療は、個別化医療の推進、予防医療の強化、遠隔医療の充実、そして医療技術や知識のグローバル化が重要なテーマになると考えています。新テクノロジー(ロボット技術やAIなど)を、これらテーマに対していかに応用していくかが重要だと認識しています。そのためにも、私たち自身が新テクノロジーを理解しながら、様々な課題に応用することが必要です。 日本医科大学は、これまでに医療教育、基礎研究、臨床応用の分野でさまざまな先進的な取り組みを行ってきました。医療が抱える課題に対峙しながら、次世代医療を推進していくためにも、若き力とアイデアを持った皆さんを心からお待ちしています。分子遺伝医学分野酒井真志人大学院教授男性生殖器・泌尿器科学分野赤塚 純准教授遺伝子情報を解析して 個別化医療を提供できる新テクノロジーがもたらす医療の進化
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