Nippon Medical School Brochure 2025
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 私は外科医であると同時に、病院長として管理者の立場で病院に勤務しています。 病院というものを総体的に理解するのは、実は簡単ではありません。医学は細分化して専門的で、医療の仕組みは単純ではありません。例えば日本の医療費支払の仕組みを明快に説明できる人はどれほどいるでしょうか? また病院には様々な職種が入り乱れるように関わって動き、さらに情報や経済の変動などと密接に絡み合っているので、病院それ自体が複雑な運動をしているかの様です。病院の運営とはそれをコントロールするような営為です。そして感染症のまん延で明らかになったように、病院には地域を支える公共財としての意義が求められています。 公を支える責任は重く、複雑なオペレーションが積み重なる病院の運営は力のいる仕事です。しかしだからこそしっかりとした手応えがあり、やりがいがあります。このやりがいの根は、日本医科大学の学是である克己殉公の精神へと、図らずも、たどっていけると日頃から感じています。 医師になろうと考えた理由は、弱者のための仕事をしたかったからです。日本医科大学に入学して、自由な校風の中でともに学んだ友人との交流は、30年たった今も続いています。 手先を使い細かい作業をすることが得意であったことと、結果がすぐに見える分野であるため、卒業後は日本医科大学形成外科・美容外科に入局しました。2013年からは「さちスキンクリニック」を開業して診療にあたっています。かかりつけ医のやりがいであり、むずかしさでもあるのは、患者さんが乳児から100歳までということ。ご家族全員が受診されることも多く、家族背景からさまざまな事情も考慮して診療します。 皮膚科から美容外科まで皮膚全般に関して可能な限り対応するのは大変ですが、開業当時は小学生だった患者さんが、お子さんを連れて受診されたときは深い感慨を覚えました。患者さんの診察施術を私自身が責任をもって最初から最後まで行うなか、迷ったときは「どんな医者になりたいと思いこの道を目指したのか」と原点に戻り、「今、自分が何をすべきか」と自分に問いています、日々の小さな喜びのために。44病院勤務・運営のやりがいは克己殉公の精神にたどれる小平 祐造花と森の東京病院 院長 〈1989卒業〉勤務医開業医ていねいな診療を続けることで大きなやりがいに変わります小池 幸子さちスキンクリニック 院長 〈2001卒業〉GRADUATES

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